5月19日(土)晴れ 今日はもう張り切って、朝からいっぱいお料理です。 気持ちのいい朝ですね。 素敵な朝ですね! 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 紅蘭:お早ようさ〜ん。 たまき:おはよーッ、紅蘭! 紅蘭:うわっ! なんやこれ〜。 たまき:えっへへ〜、すごいでしょ〜。 食べて食べて、おいしーよ〜♪ 紅蘭:すごいでしょ〜って、・・・スゴすぎやで。 どないしたん? こんなに豪勢な朝食・・・・・・ 今日ってなんかの記念日? たまき:うふふふふ。 記念日ってわけじゃないよ。 あっ ・・・もしかして、朝からこんなに作っちゃって迷惑だった? 紅蘭:いや、そないなことないけど。 ウチ、朝から牛丼でもカレーでも品川丼でも喰えるヒトやから。 たまき:よかった! 今日はねぇ、紅蘭に喜んでもらおうと思って たまき、いっぱい張り切っちゃったの〜。 ねね、嬉しい? たまきがいて良かった? 紅蘭:うん・・・まあ。 たまき:うふふ。ありがとう〜。 やっぱり誰かに必要とされてるっていいな〜っ。 紅蘭:今日はえらいご機嫌やん。 昨日なんかあったんか? たまき:・・・きのう? ななな、なにもないよ? 何事もない、平穏無事な一日でしたよ? 紅蘭:はっは〜〜ん、わかったで。 宮古はんと何かあったんやね〜。 (ドサッ) なに?どんなエエこと? 指輪とか買うてもらった? それともふたりで旅行でも行くんか? ええな〜、カレシおるとなぁ。 ・・・・・・って、あれ? 紅蘭:たまきぃーーー! どど、どないしたんや。 そんな、ぶっ倒れて。 なあ、だいじょぶか? たまき:うう〜〜、何にもないよお〜、 宮古さんとなんかぁ〜・・・ なんにもぉ〜〜 紅蘭:しっかりせえよ。 ・・・・その様子やと、なんかあったんやな。 昨日、宮古はんとなにがあったん? ウチに話してみ? たまき:・・・うう・・・昨日ね、 お買い物した帰りに本屋さんに寄ろうと思ってね、 ちょっと町のほうまで出たの。 紅蘭:うんうん。 たまき:それで本屋さんで雑誌見てね、夏のメイクとか、ダイエット特集とか 今年の水着とかいろいろあったんだけど、 でも買ってまで欲しい本がなくてね、 これじゃあ立ち読みしにきたみたいだなって、 ちょっと後ろめたい気持ちを持ちつつ本屋さんを後にしたの。 紅蘭:そんなん気にすることないと思うけど。 ・・・それで? たまき:本のおかげで気分は夏だったの。 今年の夏はいい思い出作りをしたいな〜って、 宮古さんとちょっと遠くまで行きたいな〜って、 数ヵ月後に思いをはせていたのね。 ・・・そんなことを考えながら、大きな通りを歩いていたら、 むこうから、なんと偶然にも宮古さんの車が来るじゃない。 わたし嬉しくなって、手をふって合図しようとしたのね。 でもよ〜く見たら、隣の助手席に綺麗でハデめな女の人が乗っていて・・・ 紅蘭:隣の助手席って、それあたりまえやん。 たまき:・・・・・・・・・・・・・・・・・・(じ〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ) 紅蘭:あ、ごめん。 ・・・そんな、悲しい目で見つめんでも。 ほんで? たまき:それだけでもショックだったのに、 そのあと、宮古さんと、その女の人を、乗せた車は、 ウインカーを上げて、は、入っていったの。 そこは、ほ、ほ、ほ、ほ・・・・・・ 紅蘭:・・・ホビット? たまき:違う。 紅蘭:ホビーロビー? たまき:違う。 紅蘭:ホビー館? たまき:違うよ。 紅蘭:ボークス? たまき:それ「ホ」じゃないじゃん。 紅蘭:ウチ秋葉ショールームの店長のファンやね〜ん。 たまき:関係ないでしょ。 っていうか、そういうのから離れなよ。 紅蘭:あと、「ホ」いうたらなぁ・・・ まさか入っていったのが「ホテル」やったらシャレにならんし〜。 (ドサッ) あははははは。 なぁ、たまき? ・・・・・・・って 紅蘭:うわぁ、また倒れてる! おい、ちょっと。しっかりしいや。 たまき:うううう〜〜〜、そうなのよ〜〜。 紅蘭:・・・ほんまにホテルなんか? たまき:そ、そう。 二人を乗せた車は、まるでホテルに吸い込まれるように・・・ 紅蘭:えらいところを見てもうたなぁ。 たまき:わたしバカみたいだよう。 いきなりデートの途中で帰ったり、 女の子から電話が入ったり、そんでコソコソ電話したり、 最近あんまり遊んでくれなくなったりさ。 こんなの、どう考えたって、誰が見たって浮気してるってのに、 わたしったら、宮古さんを信じて待ってて・・・・・・ あ〜〜あ、裏切られたなぁ。 騙されちゃってたなぁ。 紅蘭:・・・たまき。 かわいそうになぁ。 よしよし。 たまき:・・・わかってるの。 わたし、宮古さんを信じて待ってる自分にちょっと酔ってたんだ。 私って、なんて理解あるいい彼女なんだろうって。 彼氏を信じる素直なイイコなんだって。 だからきっと、宮古さんはそんな私の気持ちに答えてくれる、 ・・・ってさぁ。 うあ〜〜〜、バカバカ。 ほんと、ばっかみたい。 自分で自分が嫌になるよ〜〜! あーもうヤダヤダヤダヤダ! うわぁあん、こうら〜〜ん! 私の顔におっきく「バカ」って書いて〜〜! だってバカなんだも〜ん! 紅蘭:そんな、自分を責めたらアカンわ。 悪いのんは宮古はんのほうやろ? あんたは悪うないで。 たまき:・・・・・・ううっ、 そ、そうかなぁ。 紅蘭:そうそう。 あんたは悪いことないって。 ちょっと落ち着いて、な。 あんたはこういうことは真っ直ぐでトロいけど、 うちはあんたのそういうとこ、好きやで。 たまき:・・・・・・・ん。 優しくしてくれてありがとぅ。 紅蘭:しっかしサイテーやな。 たまきがおるのに、ほかの子とも、なんて。 たまき:わたしやっぱり 男の人ってよくわかんないよ。 わたしのどこを好きになってくれたのか、 どこが嫌でほかの子と浮気してるのかさ。 はあ〜〜あ。 わたし、女の子に走ろうかなぁ・・・ 紅蘭:・・・・・・いや、そらかまへんけど、 ウチ個人としては、 たまきちゃんとはいつまでもいいお友達でいましょうね、 みたいな・・・な? たまき:・・・・・・いまのは冗談なの。 紅蘭:ああ、ほんま? 本気かと思った・・・っていうか、 前から女の子に走ってるような気も・・・ たまき:・・・お台場に女の子同士で行くと、 あの二人は怪しいって噂になるの。 なんでだと思う? 紅蘭:・・・イキナリなに? たまき:それはね〜、「ユリかもね」だから〜。 うふ、うふふ・・・・・・ 紅蘭:・・・あ、「ゆりかもめ」か。 たまき:ふぅ〜〜。 ああ、ダメだ。 今は精神的にダメージでかくてギャグも冴えないよ。 紅蘭:そんなことないよ。 いつもどおり・・・ たまき:お、面白かった? 紅蘭:いや、いつもどおりサムい。 たまき:・・・・・・・・・・・・・・・・・(じーーーーーーーーーっ) 紅蘭:ああ、あの、でもちょっとはおもろいかも。 おもろかったから、その悲しげな眼差しやめて。 たのむし。 たまき:一生懸命このネタを練ったの。 紅蘭:・・・・・・・・・・・・・・? たまき:ねたをねった。 紅蘭:・・・・・・・・・・・・・ふうん。 たまき:ダメだぁ〜〜! うわあ〜〜〜〜ん! 紅蘭:うんうん。 (なでなで) たまき:・・・きっとあれが、 話しに聞いてた美脚美人さんだよ。 紅蘭:ああ、実はうちも白石はんから聞いたわ。 弁護士のお兄さんに宮古はんが紹介したって。 たまき:・・・わたしって、女として魅力ないかなぁ。 だからいつもすぐにフラれちゃうのかなぁ。 今までは、わたしは口うるさいからすぐにフラれるんだと思ってたけど、 宮古さんに対してはそういうところは見せないでよかったから、 今回はそれが原因じゃないと思うんだよね。 紅蘭:そんなん分析しても始まらんよ。 落ち込むだけやで? たまきはたまきやん。 あんたらしくしてるのが一番やで。 たまき:それでフラれてるんだから意味ないじゃん。 紅蘭:意味ないことなんかあるかいな。 特定の相手に合わせてコロコロ自分を変えてるほうが よっぽど意味ないで。 たまき:・・・・・・・そうだけどさぁ。 でもさぁ〜〜。 紅蘭:なあ、ほんまに浮気されてたんかな。 たまき:そりゃあ、されてましたとも。 決定的瞬間を見ちゃったんだから。 紅蘭:いや、たまきの話聞いて最初ラブホかと思っててんけど、 考えてみたら大通り沿いにそんなんないし。 たまき:うん。 シティホテルがあるでしょ。 あそこ。 紅蘭:せやったら、ほかの可能性もあるやろ? たとえば、宮古はんの妹やったとか。 たまき:妹はいないの。 上にお兄さんがいるだけだよ。 紅蘭:いとことか姪っ子とか。 たまき:そういう話も聞いたことないもん。 紅蘭:ほな昔のクラスメイトとか。 たまき:それは浮気じゃん! 紅蘭:ちゃうちゃう。 ホテルまで送っていっただけ、とか。 たまき:あそこは駅のすぐ近くじゃない。 車で行く必要ないよ。 紅蘭:命を狙われてて、ひとりで外を出歩けない子とか。 たまき:そんなバカな〜〜。 もういいよ紅蘭。 (ピンポ〜〜ン) 紅蘭:お客さんや。 たまき:わたしが出るよ。 なんかしてたほうが気がまぎれるし。 紅蘭:・・・・・・そうか。 たまき:は〜〜い。 どちらさまで・・・ あっ、きさらさ〜ん! きさら:そこまで来たもんだから、ちょっと寄ってみたんだ。 お邪魔していい? たまき:どうぞどうぞ。 いつでも大歓迎ですよ。 紅蘭:おう、きさらはん。 ぃらっしゃぁ〜い。 きさら:おっす、ホンラン。 あ・・・と、なにこれ。 今日は誰か、お客さんきてるの? たまき:いやあちょっと張り切っちゃって。 きさらさんも何か食べますか? きさら:あたしはさっき食べてきたから・・・・・・ あ、・・・でもちょっともらおうかな。 おいしそうな匂いでおなかすいてきちゃった。 紅蘭:食いしん坊やな。 きさら:しょうがないでしょ〜。 たまき:うふふふ。 きさら:たまきちゃん、 そういえばミヤとはうまく行ってるの? (ドサッ) たまきちゃんのほうからいろいろ誘ってあげれば、 あちこち遊びに連れて行ってくれるから、 どんどんワガママ言いなよ。 そのほうがあいつは喜ぶし・・・って、 あれ?(キョロキョロ) ホンラン、たまきちゃんどこ行った? 紅蘭:きさらはん、 ・・・あしもと。 きさら:あしもとって・・・あっ、 たまきちゃん! そんなところに倒れてどうしたの!? 大丈夫? たまき:宮古さんとわ、もう私は・・・・・・ うまくいってるもなにも、 もうおわったんです〜〜。 きさら:おわった? 紅蘭:実は、かくかくしがじか・・・・・・ きさら:なんだってぇ〜? あのミヤが、浮気? ナマイキに? あのバカから生真面目とったら何が残るのよ! たまき:あ、あのそれは言い過ぎ・・・・・・ きさら:隠し事してるけど、やましいことじゃないから 俺を信じててくれって? ム・カ・ツ・ク〜! 何様のつもり? しかも、そう言いつつ浮気でしょ? あいつフナムシ以下のサイテーのクズだわ! たまき:あのそれも言い過ぎ・・・・・・ 紅蘭:なあキサラはん。 その一緒におった女に心当たりないか? きさら:・・・ミヤが白石君のお兄さんに紹介した女の人って、 ミヤの勤めてる水族園の前の園長の娘だよ。 たしか、高嶋女雛とかいう子。 たまき:高嶋、女雛・・・・・・ 紅蘭:派手そうな名前やな。(笑) きさら:たまきちゃん! たまき:は、はい。 きさら:あたしが、気持ちイイコト教えてあげる。 たまき:・・・・・・は? 気持ちイイコト、ですか? きさら:・・・・・・ちょっと痛いかもしれないけど、 でもそれだって、すぐに気持ちよさに変るわ。 たまき:・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・? きさら:その前に右手を見せて。 たまきちゃんは右利きでしょ? たまき:・・・はい。 あの、一体・・・・・? きさら:だから気持ちイイコトよ〜。 爪が伸びてると怪我しちゃうことがあるから・・・。 うんうん、綺麗につんであるわね。 たまき:爪が伸びてると怪我、するんですか? 紅蘭:ちょい待ち、きさらはん、 どないしはったん? きさら:ホンランもいらっしゃい。 いっしょに教えてアゲル。 まずはイク時の方法ね。 たまき:イクとき、ですか? 紅蘭:いや、ウチは・・・・・・ きさら:いいから。 2人ともここに立って。 脚は自然に開きぎみにして。 たまき:・・・(どきどき) 紅蘭:立ったけど・・・? きさら:左足を1歩前に出して。 右手を斜め後ろに伸ばして、指はゆるく開き気味。 そうそう。 視線はターゲットを見据えたままね。 手首を外側にまげて。 紅蘭:ターゲット? きさら:そのまま大きく弧を描くように右手を前に出して。 肩全体で動かすように、肘はやわらかく、 テニスラケットを振り切る感じで、しなる鞭のように。 練習だからゆっくりね。 たまき:こうですか? きさら:そうね。 で、インパクトの瞬間、手首はスナップをきかせて 内に曲げる。 パン! 視線はそのまま。 ・・・うん、いいわよ。 今度は早くやってみて。 たまき:早く、ですか。 えっと、 (ブンッ) (ブンッ) きさら:たまきちゃんすごいね。 素振りで風を切る音がするとは・・・。 ちゃんと鍛えてると違うなぁ。 たまき:(ブンッ) あの〜〜、きさらさん? 紅蘭:これってもしかして・・・ きさら:ホッホッホッ。 そう、平手打ち。 つまりビンタよ。 あ、ほら指はゆるく開き気味っていったでしょ? インパクトのときに指が開いてないと、 耳にあたったときに風圧で鼓膜が破れるときがあるから、 そこんとこ注意。指は開き気味ね。 でも、あんまり開くと、叩いたときにいい音がしなくなるから、 ホドホドにね。 紅蘭:おいおい・・・ きさら:おいおいじゃないわよ、 ビンタにおいて音は重要なのよ。 叩かれた瞬間、耳のそばでバン!って、すごい音がするわけじゃない。 これが一発で相手の行動を止めるキモなのよ。 んで、今のがイク時。 帰るときは、手首のスナップを逆にするのよ。 紅蘭:しかも往復ビンタかいな。 たまき:ちょ、ちょ・・・ きさら:ターゲットの顔は最初のビンタでまだ横を向いたままでしょう。 いい? この時点で裏拳でビンタすると、手の甲が相手の口にあたって、 歯で皮膚を切ることがあるから気をつけて。 相手をよく見て、顔がこっちを向いた瞬間、帰りのビンタ。 パン! はいやってみて。 たまき:はあ。 (ブンッ・・・ブンッ) でも、きさらさん・・・・ きさら:帰りがイマイチだなぁ。 たまきちゃんは最初のビンタがスピードありすぎで、 帰るときにバランスが崩れるのかな。 たまき:あの〜〜・・・ きさら:よし、たまきちゃんはビンタのインパクトの直前、 右足のかかとを時計と反対周りにひねってみて。 それで腰がキレたいいビンタになるから。 たまき:(ビュッ) こうですか? (ヒュッ) 紅蘭:うわ、こわ〜。 きさら:そうそう。 たまきちゃんは片道ビンタで十分だわ。 イ・タ・ソ〜♪ よおし、じゃあ行こうか。 たまき:・・・行こうかって? きさら:もちろんミヤのところよ。 あのクズをブッ叩いてやったら、それは気持ちいいわよ〜! たまき:ダッ、ダメですよそんな、 暴力はいけませんよ。 きさら:なに言ってるのよ。 たまきちゃんをそれだけバカにしておいて、 そのまま済まさせるわけには行かないでしょ。 あいつにとってもいい薬になるわ。 紅蘭:服用量しだいでは死に至りそうやけど・・・。 たまき:そんなことしてもなんにもなりませんよ。 宮古さんをビンタしたって、わたしの気は収まらないし。 紅蘭:ということは、ターゲットは相手の女やな? この泥棒ネコー! バーン! ・・・とかいうて。 たまき:それもしませんて。 きさら:じゃあ、たまきちゃん的には、どうすれば気がすむのよ? たまき:わかりません・・・けど、 とにかくビンタじゃありません。 きさらさんの気持ちは嬉しいですけど・・・・・・ きさら:いや、基本的にあたしがミヤにムカついてて、 たまきちゃんと一緒にビンタしたいだけだから。 たまき:あ、そう・・・ですか。 紅蘭:ほななあ、ここはひとつ宮古はんに電話してみたらどないやろ。 もしほんまに浮気なら、これからどうするつもりか、 どっちと別れるのかはっきりしてもらいたいし、 それを聞いてから、こっちもアクション起こしたほうがええやろ? 新しい恋に生きるもよし、捨てないでと泣いてすがるもよし、 とりあえずブッ叩きに行くのもよし。 それにさっきも言うたけど、あんたの勘違いかもしれんし。 きさら:そうだね、ホンランの言うとおり、 確かにまず事実関係ははっきりさせておいた方がいいね。 紅蘭:きさらは〜ん、ビンタの前に考えんと〜。 たまき:でんわ・・・するの? 紅蘭:せなんだら、あかんやろ。 たまき:う〜〜ん・・・・・・ 紅蘭:それでとりあえずケジメつくやん。 たまき:でもぉ〜。 それって気が進まないなあ。 きさら:ふ〜む。 もしかして、はっきりさせるのが怖いんじゃないの? たまき:・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・怖い? きさら:電話して浮気が確定して、今後二人がどうなるかが 決まっちゃうのが怖いんじゃない? あいまいな今のままなら、口では「もうダメ」なんていってても、 「もしかしたら勘違いかもしれない」「また仲良くなれるかもしれない」 なんて思っていることができるからね。 だから、私はなんてかわいそうなんだろうって、 悲劇のヒロインに酔ってる余裕もあるってわけよ。 紅蘭:きさらはん、それは言い過ぎやで。 この子かて辛いんやし。 たまき:わたしは別に、悲劇のヒロインなんかに・・・・・・ でも、はっきりさせるのが怖いのは・・・認めます。 はっきりしてない今なら、まだ希望があるような気がして、 それにすがっていたいような・・・・・・ きさら:でもね、たまきちゃん。 それは希望じゃなくて、ゴマカシよ。 目の前の現実を見ないで、自分の中に逃げてるだけだわ。 事はもう起こってるんだから、それに対処していかないと。 たまき:・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ きさら:もっとも、それは今すぐでなくてもいいと思うけどね。 少し時間をおいてからでもいいのよ。 たまき:・・・いえ、 そうですね。 きさらさんの言うこと、わかりました。 わたし、電話して宮古さんにちゃんと聞きます。 自分を誤魔化しているあいだは、前に進めませんもんね。 きさら:そうだね。 よしよし、がんばってね。 たまき:とはいったものの・・・・・ はうぅぅ〜〜〜(どきどき) (プルルルルルルル・・・、プルルルルルルル・・・) たまき:宮古さん・・・・・・ 早く出てほしいような、ずっと出ないでほしいような・・・ (プルルルル・・・) 宮古:っはい、もしもし? たまき:宮古さん、・・・たまきだよ。 宮古:ああ、たまちゃん、どうした? 俺いま・・・・・・あ、ちょい待って。 電話?どこから? ああ、いまちょっと・・・待たせててくれ。 ・・・悪い悪い、で、どうした? たまき:あのさ、前々からはっきりさせたかったんだけど、 宮古さんわたしに隠し事してるでしょ? 一体なんなの? 宮古:そのことは、そのうち話すって・・・・・・ たまちゃんもそれで納得してくれたじゃんか。 おーい、誰か電話出ろよ! ・・・そう、記者会見の時間は市と打ち合わせしてから。 今はまだ決まってない。 ・・・電話? わかった、すぐに出るから。 ごめんな、いまここパニクってて。 それ、もうちょっと待っててくれるわけにはいかないかな。 たまき:もうちょっとって? ・・・・・・もう嫌だよ、 騙されてるのは嫌なの。 宮古:騙す? 俺が? そんなことないって。 俺はたまちゃんのこと騙してなんかいないよ。 だから・・・ たまき:そんなの嘘だよ。 宮古さん、わたしのほかにも付き合ってるが子いるんでしょ? 浮気してるでしょ! 宮古:はあ? そんな子いないって。 なにいってるんだよ。 今日のたまちゃん、ちょっと変だぜ? たまき:じゃあ・・・・ 宮古: わかってるって。すぐ出るから。 もう少し待たせててくれよ。 ・・・っと悪い、こっちの話。 あのさ、じつは今、副園長のことですっげー忙しいんだよ。 あちこちから電話かかってきてて、 俺はここの広報もやってるから、なかば責任者でさ。 こっちから電話するから、 この話、また今度でいいかな。 いいよな。 たまき:なっ・・・・・・ ちょっとぉ! 宮古:いい? じゃ切るから。 たまき:わっ、わたし見たんだからね! 宮古さんが昨日、女の子連れてホテルに入っていくのを! 宮古:・・・・・・・・あっ!? いや、あれは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・見ちゃったのか。 たまき:そっか、やっぱり人違いじゃなかったんだね・・・ 浮気の相手はあの子なんだ。 ・・・ひどいじゃない、宮古さん。 わたし信じてたのに・・・・・ 宮古:ご、誤解だよ、 あれはそんなんじゃなくって・・・ たまき:そんなんじゃなかったら、なんなのよ。 まだ言い訳するの? 自分にやましいところがないって、まだいえるの? 宮古:確かに昨日、一緒にホテルに入ったけど、 あれは送っていっただけだよ。 あのとき俺とヒナとは、 別になにも・・・・・・・・・・・・・ なにも・・・・・・・・・・・・・・・・ たまき:何も、なんなのよ。 宮古:なにも・・・・・・・・・なかったよ。 たまちゃんが心配してるようなことは・・・ たまき:じゃあ何があったっていうのよお! それは言えないの? それでも信じろっていうの? バカにしないでよ。 宮古:とにかく待ってくれよ。 電話じゃなくて、今度会ってちゃんと話そう。 いいだろ? たまき:いつ? 宮古:さっきも言ったけど、今忙しくて、いつになるかわかんないんだ。 とにかく・・・・・・ ・・・んも、なんだよ、いまそれどころじゃ・・・ 市長から電話?いいから待たせとけ! たまちゃん、あの・・・ たまき:・・・わかったよ、宮古さん。 忙しいところごめんなさい。 じゃあね、今までありがとう。 ・・・さようなら。 宮古:あっ、ちょっ・・・ (ピッ) たまき:・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ はあ〜〜〜〜〜〜〜〜〜あ。 紅蘭:たまき? たまき:なあに? 紅蘭:その、・・・・・・どうやった? たまき:聞いててお察しの通りだよ。 これでおしまい。 紅蘭:・・・そうか。 たまき:あ〜やれやれ。 なんか、せいせいしたって感じ。 すっきりしたよ。 電話してみてよかった〜。 あ。 ・・・・・・・・・やだな、ふたりとも。 そんな同情の目で見ないでよ〜。 きさら:おっと、ごめん。 紅蘭:たまき、平気なん? たまき:平気平気。 そりゃちょっとはこたえてるけど、 でも大丈夫だよ。 紅蘭:ほんま? たまき:心配してくれてありがと。 紅蘭。 きさらさんも。 きさら:お疲れさん。 ねえ、気晴らしにあたしの車でどこかに行こうか。 ちょっと遠くがいいかな。 たまき:いいんですか? ねえ行こう、紅蘭。 紅蘭:いこいこ。 きさら:房総のほうにマザー牧場と東京湾観音ってのがあってさ、 (ドサッ) 自然がいっぱいで眺めがよくて、 なかなかいいところらしいんだよね。 そこ行こうよ、ねえ、たまきちゃん。 あれ?(キョロキョロ) ホンラン、たまきちゃんどこ行った? 紅蘭:きさらはん、あしもと。 きさら:え? ああっ、大丈夫? 何で? たまき:とうきょうわんかんのんわ〜、 みやこさんとのおもいでのばしょだからって〜 べつにぃ〜、べつにぃ〜・・・ きさら:あ、そうなんだ。 紅蘭:無理して明るく振舞ってても、 やっぱり内面的に相当ダメージ食らってるんやな〜。 たまき:あとね〜、じつはわたしきのうの夜眠れなくて、 仕方がないからずっとおきてて、お料理作ってたの。 それもちょっとあるかも〜。 あしもとふらふらするの〜〜。 きさら:朝からこの品数には無理があると思ってたけど、 ・・・徹夜したの? 紅蘭:あんたアホやなぁ。 ほれ、ベッドに行こ。 たまき:うにゅうう〜〜〜 だっこ〜〜 紅蘭:・・・・・どないしよ、この子。 きさら:してやったら? だっこ。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 なんかもう、ダメダメです。 心にできたキズは時間が癒してくれるっていうけど、 ・・・こういうときに限って時間がすぎるのが遅いんですよね〜。 はあ、ツライです。 |