1月13日(土)


ヒナ:おはようございます、リコさん。
リコ:おはよう。
   ・・・おねえちゃんは?
ヒナ:いえ、まだ来てませんけど。
リコ:そうか。

d10112-1.jpg - 47,842Bytes 隠し事?

ヒナ:・・・・・・?
   どうしたんですか、なんだか元気ないですよ?
リコ:あのさぁ、朝っぱらからなんなんだけど、
   ヒナちゃん。
   あたし達に隠し事してるでしょ

ヒナ:・・・かくしごと?
リコ:早い話、お父さんのこと。
   ヒナちゃんて、公金横領でニュースになってた、
   水族館の高嶋元園長の娘なんでしょ?
ヒナ:・・・・・・・・・・・そうですか。
   ・・・わかっちゃったんだ。
リコ:そうなんだね。
ヒナ:・・・・・・はい。
   あれはあたしの父です。
   でも、なんでそれを・・・・・
リコ:どうしてお父さんのことをあたしたちに黙ってたの?
   あたし達が、亡くなったお父さんのことを気にするとでも思ったの?
ヒナ:そういうわけじゃ・・・だって言い出しにくくて。
   ・・・・・・あたし、
   すぐにここが好きになっちゃったから、
   へたなことを言って、ここに居られなくなるのが怖かったんです。
リコ:ここに居られなくなるって・・・クビってこと?
   そんなことになるはずないだろ。
   あたしらってそんなふうに見える?
ヒナ:・・・お父さんが横領したお金は市に返さなくちゃいけないし、
   退職金も・・・ほかにもいろいろ厄介なことがあるんです。
   裁判になるかもしれないし。
   もし面接するときにこのことを言ってたら、
   あたしの事をとってくれました?
リコ:・・・・・・・・・わかんないな。
   とらなかったかもしれない。
ヒナ:ですよね。
リコ:でもさぁ、それはほとんど初対面の、面接のときの話だよ。
   もう何ヶ月も一緒に仕事してきた仲じゃない。
   それでも、信じてくれないの?
   忘年会のときは、あのニュースを見て気分が悪くなったんだろ。
   あの時あたしに何か言おうとしてたのは、
   このことだったんでしょう。
ヒナ:あの時も、言えませんでした。
リコ:・・・責めてるわけじゃないんだ。
   理由が知りたいだけなの。
   信じられなかったっていうなら、それはそれでいいし。

d10112-2.jpg - 36,558Bytes わかんないです

ヒナ:よくわかんないんです。
   信じているつもりなんですけど、それでも最後には
   あたしの事を嫌ってどこかに行っちゃうんじゃないかって、
   そんな気がして・・・・・・・・・・・・・。
リコ:・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
ヒナ:あたし、
   誰かと知り合うと、もうそのときから別れるときのことを自然と考えちゃうんですよね。
   楽しいときをすごしているときほど、「でもいつかは終わるんだな」って思ったり。
   別れるときのことを先に考えておけば、ほんとに別れるときにちょっとは楽だからかな。
リコ:それじゃあ楽しくないでしょう。
   心の底から楽しんでるときって、その終わりなんて考えないもんだよ。
ヒナ:でも、いくら仲がよくたって、信じあってたって、
   結局いつか、人は別れちゃうものでしょう。
   楽しい時間はいつか終わるじゃないですか。
リコ:たしかにそうだけど・・・・・・
ヒナ:あたしはいままで、何人もの人たちと仲良くなって、別れてきました。
   子供のころ遊んだ友達とはいつのまにか遊ばなくなっちゃったし、
   優しかったお母さんは、あたしが子供のころに死んでいなくなっちゃった。
   尊敬してたお父さんは、横領なんかしてあたしの信頼を裏切った挙句、
   かってに一人で海で死んじゃった。・・・ひどいですよね。
   そのことを知った友達からはもう電話もかかってこなくなった。
   みんなどんどん離れていっちゃう。
   リコさんだって、いままでそうだったでしょう?
リコ:そうか。
   ヒナちゃんはそういう考え方するんだ。
   ちょっと意外だな。
   信じたいけど、信じ切れない、・・・のかな。
ヒナ:あ・・・ごめんなさい。
   生意気なこと言っちゃったかも。
   とにかく、・・・父のことを言わなかったことは謝ります。
   すみませんでした。
   このことでリコさんたちに迷惑はかけないつもりです。

リコ:それなんだけどね〜。
   いや、これでもヒナちゃんを辞めさせる気はないっていったら、
   もっと信じてくれるようになるかな。
   この本、見てみなよ。(バサッ)
   今朝コンビニで買ったんだけど。
ヒナ:これって、・・・・・・写真週刊誌?
リコ:昨日発売のだよ。
   ここのところ。
   「高嶋園長の娘の気になる就職先」
   「顧客は女性限定。超能力ペット探偵の実力と真偽」
ヒナ:えっ!?

d10112-3.jpg - 19,364Bytes 週刊誌

リコ:実はこの記事で、ヒナちゃんのお父さんの事を知ったんだよ。
   記事には直接ウチの名前は出てないけど、住所はここだし、
   この写真はこのマンションの入り口だし、
   目伏せされているこの人は、
   ヒナちゃんだよね。
ヒナ:はい・・・・・。
   (そうか・・・尾行されているような気がしたの、
    あれは気のせいでもストーカーでもなかったんだ。
    家からここまであとをつけられて・・・・・・)
リコ:見てよ、この記事。
   お姉ちゃんが向こうの占い師の団体ともめて
   追い出されてこっちにきたことまで書いてあるよ。
   そりゃモメるわな、本物なんだから。
   でもこの記事じゃあ、
   お姉ちゃんはトラブルを起こした、ただの占い師だ。

ヒナ:「そのやり方は極めててユニークなもの。
    この自称超能力者のスタッフが客の家におもむき、
    客の顔に手を当てるだけでたちどころにペットの居場所がわかるという。
    早いときは1時間ほどでペットを見つけることもあるそうだ。
    まるで最初から居場所がわかっていたかのようだったと、
    以前この便利屋にペットを見つけてもらったSさんは語る。」
   ・・・・・・ひどい、ニコさんがインチキみたいな書き方じゃないですか。
リコ:ウチのことだって、近所のお客さんにはわかっちゃうだろうなぁ。
   嘘は書いてないけど、いちいち誤解を招く書き方だよ。
   ま、マスコミなんてのは、記事が面白ければそれでいいんだよな。
   なぜなら、買うお客がそういうのを求めてるからね。
   それが事実かどうかなんてのは、読者はたいして興味ないでしょ。
   これは報道じゃなくて、娯楽なんだからさ。
   ・・・しっかし参ったよなぁ。
   やっと仕事が軌道に乗ってきたと思ってた矢先にコレだよ。
   今まで苦労してきたことが、こんな記事で水の泡かもしんない。
ヒナ:リコさん・・・・あの、あたしどうしたら・・・・・
   こんなことになるなんて思わな・・・・・・・・
リコ:コレはヒナちゃんのせいじゃないよ。
   ヒナちゃんを責める気も辞めさせる気も全然ない。
   あたしがさっきから言ってた、信じてほしいっていう言葉の重み、
   わかってくれるよね。
   また出直しだけど、
   あたしとお姉ちゃんと、一緒に頑張ろう。
ヒナ:・・・ダメです。
   あたしここに居られない・・・・・・
リコ:・・・・・・え?
   なに言ってんだよ、ヒナちゃん。
   どうして・・・・・・?
   さっき、ここにずっと居たいって言ってたじゃん。
ヒナ:居たいですよ。
   でも、あたしがいるかぎりまた、こういう記事を書かれるかも。
   何度でも。
   いくらみんなで頑張っても、それじゃあ・・・・・・
リコ:うっ・・・それは・・・・・・・・・・・・・・。
   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
   ・・・・・・・・・・・・・いやダメだ。
   やっぱりダメだよ。
   こんな記事の4本や5本、なんてことないよ。
   いい仕事していれば、お客さんもわかってくれる。
   一緒にがんばろうよ。
ヒナ:・・・ありがとうございます。
   あたし、リコさんもニコさんも大好きです。
   ここもこの仕事も、本当に大好き。
   でも、だからこそ迷惑かけたくないんです。
   あたしがいなくなれば、もう二度とこんな記事を書かれずにすむでしょ!?
   あたしがいたからこんな記事を・・・・・・

ニコ:大変大変!大変らよ!
   今コンビニで買い物してたら!
リコ:お姉ちゃん。
   ・・・お姉ちゃんもこの本見たんだ。
   この記事を知ってるなら話が早い。
   実は今、ヒナちゃんが・・・・・・
ニコ:この新発売のホイップサンドメロンパン、超ウマらよ〜。(笑)
   みんなの分も買ってきたが。はいリコちゃん。
   食べて食べて♪
   ほら、ヒナちゃんも。
   おいしいよ〜、ホラ。ふわふわで・・・・・・
   ・・・・・・ヒナちゃん?

ヒナ:ニコさん・・・あたしここ辞めちゃうの。
ニコ:ええ〜〜!?なんでぇ??
ヒナ:すいません。
リコ:ヒナちゃんはさ、あの水族館の公金を横領した園長の娘さんなんだ。
   それをこの雑誌に記事にされて、ついでにウチにこともでかでかと載せられたんだ。
   まあこれがひどい記事で・・・
   それを気にして、ヒナちゃんここを辞めるっていいだして。
ニコ:これ?
   ふぅ〜〜ん。(パラパラ)
   ああ、・・・嫌な書きかたらねぇ。
   慣れてるろも。
ヒナ:そういうことなんで、勝手言ってすいません。
   短い間でしたけどお世話になりました。

d10112-4.jpg - 44,971Bytes だめだよう

ニコ:ああん、ちょっと待って〜。
   そんがん嫌らぁ。
   せっかく仲良しになれたってが〜に。
ヒナ:仲良しになっても、いつかお別れするときが来るもんですよ。
   そういうものじゃないですか。
   だから・・・・・・
ニコ:そんがことない。
   お互いにずっと仲良しでいたいって思ってれば、
   絶対にお別れなんて来ないて!
   そうらろ?
   オレはヒナちゃんとず〜〜っと仲良しでいたいって思ってるけど、
   ヒナちゃんはそうは思わないが?
ヒナ:・・・ずっと、仲良し?
   あ、あたしだって思ってますよ。
   でも、これ以上迷惑・・・・・・・・
ニコ:ううん、ヒナちゃんは思ってない!
   こうしてるとよくわかるぉ。
   ほら、もうオレ達からどんどん遠ざかろうとして・・・・・・
   なんで?
   迷惑をかけたくないのもあるみたいだけど・・・・・・
   それよりもヒナちゃん、なんか怖がってるよ?
ヒナ:・・・怖がってる?
   うそですよ。
   そんなこと・・・・・・
ニコ:・・・・・・人と本当に仲良くなるのが・・・怖い?
   その人を好きになればなるほど、あとで必ずくる別れがつらくなるから・・・?
   だから、もっと好きになる前にその人から離れていこうとするがか?
   ねぇ、ヒナちゃん。
ヒナ:あたしは・・・・・・
ニコ:・・・ヒナちゃんは寂しがりやなんだね。
   好きな人とお別れがつらくて・・・怖くて・・・
   だからそんなふうに、逆に自分から離れていこうとするがぁよ。
ヒナ:あたし、・・・そんなことないです。
   そうじゃなくて、迷惑かけちゃうからです。
リコ:辞めちゃダメだよ。
   いっしょにやっていこう。
ニコ:オレもヒナちゃんと一緒にいたい。
ヒナ:ありがとう・・・
   でも、やっぱりダメだよ。
   これ以上いたら・・・・・・・・
   あたしのことで二人に嫌な思いさせたくないから。
リコ:だ〜か〜らぁ〜・・・。
ヒナ:さよなら。
ニコ:ヒナちゃん!
リコ:あっ、ちょっと待てってば!


 逃げるようにイズモザキ便利店を出て、とぼとぼ歩いて帰った。
 今までのあたしのことを考えながら・・・・・・

 モト君と初めて会ったのは、もう5年くらい前かな。
 あたしはそのころ、とっても人見知りする子だった。
 モト君がパパに会いに家にくると、さっさと自分の部屋にはいっちゃってた。
 なんどか話し掛けられたのに、口をきいたこともなかった。
 そのうちモト君は話し掛けてくれなくなった。
 あのころは、モト君はあたしに嫌われてると思ってただろうな。
 
 でもね、あのとき、
 あたし、モト君のこと大好きだったんだよね。

 内気な子でさ、モト君の前だとドキドキして、
 もう何を話していいかわかんなくてさ、
 だから心の中でいっぱい、いっぱい、思ってたんだ。
 この気持ちに気がついてって。
 本で読んだおまじないをしたりして。
 ・・・・・・気がつくわけないよね。
 で、自分だけ勝手に盛り上がって、
 ある日突然勇気を振り絞って、
 コクって、
 そんでふられちゃったんだ。

 あたしはそのとき拒絶されたと思ってたけど、
 考えてみれば、そもそも
 あたしのほうがモト君を拒絶してたんだよね。

 この間もそうだったっけ。
 海にお花を供えに行ったとき。
 あのときも、モト君が気を使ってくれるのが怖くなって、
 途中で置いてってもらったんだ。
 モト君にはもう彼女がいるんだから、
 また好きになったらつらい思いをするのは確実だもん。
 だから、また自分から拒絶しちゃったんだ。
 悪いことしたな。
 ごめんね。

 その人のことを好きであればあるほど、
 自分が拒絶されるのが怖いから、先に自分が拒絶しちゃうんだよ。
 そのほうが楽だから。
 でもそんなのよくないよね。

 ニコさんとリコさんとも、結局そんな気持ちで別れてきちゃったのかな。
 もう二人に迷惑はかからないと思うけど、
 これで正しかったのかどうか・・・・・・わからないよ。

 ふと気がつくと、もう家の前だった。


ヒナ:あれ?
   この車、モト君の?
   うそ。
宮古:ヒナ。
ヒナ:モ、モト君!
   やだ、どうして?

d10115-5.jpg - 41,643Bytes どうしたの?

宮古:よ。
   電話はともかく、会うのは久しぶりだな。
   いや、なんどか携帯に電話入れたんだけど、電源切ってるのか?
   つながらなくて。
ヒナ:う・・・うん。電源切ってるの。
   ・・・ちょっとあってね。
宮古:なんか元気ないな。
   何かあったのか?
ヒナ:・・・あたしが新しく勤めたところね、
   あたしのせいで雑誌に変な記事を書かれちゃって、
   みんなに迷惑かけちゃったんだ。
   申し訳なくて、辞めてきちゃった。
宮古:そうなのか。
   ・・・楽しい仕事だっていってたのに。
   残念だったな。
ヒナ:うん。
   ・・・・・・ところで、
   今日はどうしたの?
   急にウチに来るなんて。

宮古:高嶋園長のことでヒナに話しがあったんだ。
ヒナ:お父さん・・・パパのこと?
   ・・・・・・思い出話ならもうやめようよ。
   あたしに一番ひどいことをしたのはパパだよ。
   信じてたのに、横領なんかしてあたしを裏切って、
   一人で勝手に死んじゃってさ。
   今日のことだって、パパがあんなことしなければ、
   ずっとみんなとお仕事できたかもしれないのに・・・・・・
宮古:そんなふうに言うんじゃないよ。
   それに俺がしにきたのは思い出話なんかじゃない。
   大事な話なんだ。
   俺達は、園長のことで大きな間違いを犯していたかもしれない。
ヒナ:・・・・・・・・・・・・・?
宮古:あのとき、海に花をささげにいったとき、
   園長のものだった、このダイブコンピュータをオレにくれたろう。
   ずっとしまいっぱなしで気がつかなかったんだけど、
   これには園長が事故でなくなったときのログ・・・記録が残ってたんだ。
ヒナ:どういうふうに残るの?
宮古:潜っている場所の深さと、その時間だ。
   これは高級品で、水につけると自動的に計測が始まるタイプなんだ。
   このデータによると、園長はあの日、
   海に入ってからいきなり30mの深みまで潜っている。
ヒナ:そうなんだ。
宮古:そうなんだじゃないよ。
   あの場所に園長は車をとめて、水中銃を持って、
   岩場から一人で海に入ったんだろう。
ヒナ:・・・うん。
宮古:おかしいと思わないか?
   二人でいったあの海を思い出して見ろよ。
   岩場で、海藻がたくさん生えててさ。
   あのへんの岩場は遠浅なんだよ。
   だから太陽の光が底までてどいて海藻が豊富に生えて、
   魚影が濃くて、波が極端に荒くなるんだ。
   そこから海に入ったとしたら徐々に深いところに行くはずだ。
   ところが、ログのデータはそうなっていない。
   園長は岩場から海に入ったんじゃないんだ。
   あの場所からじゃあ、いきなり30mまで潜るなんて不可能なんだよ。
   このログのデータからすると、園長は船で直接沖まで出て、
   そこから海に入ったとしか考えられない。
   ・・・・・・そしてそのまま30m沈んで、それきり動いていない。
ヒナ:あの日パパは船を借りていないよ。
   まだ捜索中で遺体が見つかる前に、それは警察が調べたはず。
   ゴムボートとかも持ってなかったし。
宮古:ああ。
   岩場から潜ったんでなければ、あそこに車が置いてあったのはおかしい。
   重いダイビングの装備を付けたままで船が接岸できる場所まで
   わざわざ行ったことになる。
   その船も、園長が借りたものではない以上、
   他の誰かが借りたか、その誰かの所有するものなんだろう。
   ・・・つまり園長は一人で海に行ったんじゃなかったんだ。
   誰かと一緒だったんだ。
   そしてそこで何かあった。
   データでは、沈んだきり動いていない。
   園長は海に入ったときにはもう死んでいたのかもしれない。
ヒナ:・・・じゃあ、あれは事故じゃなかったってこと?
   パパは・・・誰かに殺されたっていうの?
宮古:そうかもしれない。
   なんにしても、船で一緒だった奴が事情を知っているだろう。
ヒナ:殺されたんだとしたら、なんで?
   パパが誰かに恨まれるなんてこと・・・・・・
宮古:とにかくこのダイブコンピューターを持って警察に行こう。
   これを証拠として、それでもう一度船とかを調べてもらえば、
   一緒だった奴が誰か、わかるかもしれないだろう。
ヒナ:そうだね。
宮古:じゃあさっそく行こう。
   早いほうがいい。
ヒナ:うん。


パパの死に疑問を抱いて警察にいって事情を話したけれど、
まったく取り合ってくれなかった。
すでに事故死として処理されているし、遺体はもう荼毘に付されていて再調査はできないし、
なにより、ずっと手元にあっていくらでも変えることのできるデータを、
殺人の証拠として取り上げることはできない。
そういうことだった。
そもそも、事故当時にダイブコンピュータを調べなかった警察の捜査に
問題があったのは明らかなんだけど、それも認めなかった。
1時間くらい押し問答をした挙句、いったん出直すということで
二人で帰ってきた。

d10115-6.jpg - 44,770Bytes 思うように行かないね

宮古:そんなにがっかりするなって。
   明日、鈴原副園長に相談してみるよ。
   あのひとはヒナのお父さんと仲がよかったし、力になってくれるかもしれない。
   副園長の話なら、俺らが言うよりは警察も聞いてくれるだろう。
ヒナ:がっかりはしていないけど、・・・なんか悔しくてさ。
   みんなでパパのこと、ニュースにして面白がったり批判したり、
   かと思うと、もう終わったことだからって取り合ってくれなかったり。
宮古:オレだって悔しいよ。
   でもこのままにしては置けないだろ。
   誰も取り合ってくれなくても、俺達だけでも頑張らないと。
ヒナ:うん。
   もしもパパを殺した奴がいるなら、
   あたし許さない。
宮古:オレだってそうだ。
   とにかく、副園長にあたってみるよ。
   じゃあ俺、そろそろ行かなきゃ。
ヒナ:・・・そうなの?
   あの、あの、せっかくだから中に入ってゆっくりしていけばいいのに。
   うちに来るの久しぶりでしょ?
   ね?
宮古:そうもいかなくて・・・
ヒナ:・・・もしかして仕事中に抜け出してきた、とか?
宮古:いや、・・・デートの最中だったんだよ。
   理由も言わずに彼女置き去りにして来ちゃったんだけど。
ヒナ:彼女を置き去り・・・・・・?
   そこまでして来てくれたの?
宮古:やばそうな話じゃないか。
   あの子は巻き込みたくないんだ。理由なんて言えないだろう?
   ああ〜、でも怒ってるだろうなぁ。
   なんていって謝ろうかな。
ヒナ:嬉しい・・・
宮古:は?
ヒナ:ううん。
   パパのためにだよね、
   ありがとう。
宮古:まずいよなぁ〜。
   



 
     
 
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