(ゴーン・・・ゴーン・・・) 今から105年と4ヵ月半ほど昔。 ナージャはまだイギリスのアップルフィールド孤児院にいました。 そして今日、雪の降る大晦日の寒い夜、 ナージャは一抱えのマッチを売りに街を歩いていたのです。 ナージャ:マッチはいりませんか? マッチはいかがですか? 道を通る人達は、小さなナージャには見向きもせず、 みな足早に通り過ぎていきます。 ナージャ:もうこんなに雪が・・・ 寒いなぁ。 はぁ。まだマッチが一本も売れていないわ。 このまま帰ったのではまた院長先生にぶたれてしまうし、 どうしよう、困ったわ。 でも〜〜、 悩んだってムダよ〜ケセラ〜セラ〜、 セラ、セ・・・ (ドンッ) きゃあっ! たまき:うわっと、ごめんなさい! 大丈夫? ナージャ:いたたた・・・ ああ、よかった。 マッチは無事だわ。 わたしのほうこそごめんなさい。ちょっと踊ってて。 お姉さんこそ大丈夫? たまき:・・・・・・・・・・・・・・・・ ナージャ:・・・おねえさん? ねえ、どうしたの、そんなに目を丸くして。 たまき:もしかしてあなた、 マ・・・マッチ売りの少女、ですか? ナージャ:ええ。 そうですけど? たまき:あっ・・・うっ・・・・ うわああああああん!!うわああああああん!! ぐもひいいいいいいいいい! ナージャ:なっ、なんですかいきなり泣き(?)出して。 たまき:えぐっ、ぐしゅっ、だって、だって〜、 いや、泣いている場合じゃないわ! おじょうちゃん、マッチはわたしが買ってあげる! 箱買い!カートン買い! ナージャ:いいんですか!うれしい! でもいったいどうして・・・・ たまき:いいのいいの。 わたしマッチ売りの少女に出会ったらゼッタイ優しくしてあげるぞい、って 子供のころから心に決めていままで生きてきたんだから! ナージャ:そうなんですか?ありがとうお姉さん。 でも・・・このマッチは高いですよ? たまき:高いって、たかがマッチでしょう。 なんで? まさか・・・ ナージャ:そ、そうなんです。 このマッチはなにかに火をつけるためじゃなくって・・・その・・・ 暗いところを照らすため、というか・・・、なんというか・・・・ ともかく、ごっ、ご覧ください! たまき:やだ、そんな・・・・・・・ ナージャ:このマッチ1本1本には、院長先生の手によって 般若心経266文字が書かれているのです。 これは大変ありがたいお経でして、このマッチを大晦日の夜にともすことによって、 翌年の無病息災、家内安全、学業成就のご利益が得られるのでございます。 たまき:やっぱりそうか〜。 でもいいよ。わたしに売ってちょうだい。 ナージャ:1本400円です。 たまき:・・・うっ。 10本で4000円か。買い占めするには勇気のいる値段だわ。 ええっと、所持金額は・・・ちゅうちゅうたこかいな・・・・ こ、これで買えるだけください。 ナージャ:22000円分もですか? ありがとうございます! あの、でもいいんですか?なんだかムリしてません? たまき:ダ、ダイジョブです。 てか本当はこのお金使ったらご主人様に叱られちゃうんだけど、 そこはなんとかじょうずに甘えてしのいでみせるわ。 ナージャ:ありがとうお姉さん。 わたし、こんなに優しくしてもらったの、2回目です。 たまき:2回目? ナージャ:以前、ボーマン船長というかたから たくさんの宇宙食と宇宙服をいただいたことがあって・・・ たまき:うーん、ものすごく一部の人にしかわからないネタですな。 じゃあ、わたしはこれで。 ナージャ:お姉さんさようなら! また来てね!(笑) たまき:う、うん!がんばる!(笑) ナージャ:いいお姉さんが通りかかってくれてよかったな。 売り上げは夜食のお弁当と一緒に入れとこう・・・よいしょっと。 ナージャ:よーし、残り4本だからがんばって全部売って帰ろうっと! マッチはいかがですか〜、 家内安全・無病息災・学業成就に大変ご利益がありま〜す。 ・ ・ ・ ナージャ:いや〜、やっぱり全然売れなかったな。世の中そうあまくないや。 そろそろお弁当食べて・・・もう帰ろうか。 今日は22000円分も売れたんだもんね。 きっと園長先生もほめてくれるに違いないわ。 ナージャ:ん?なにこれ。 「サンドイッチと現金22000円はたしかにいただいた。 怪盗黒バラ」 ナージャ:ぎゃああああ!うそ! 今日の売り上げ! わたしのお弁当! ・・・ない? ・・・ないぃ? 盗まれたー! せっかくの売り上げ、全部持っていかれちゃったーーー! 「たしかにいただいた」じゃねえ!ビシッ! クツでグリグリー! ナージャ:これじゃあ孤児院に帰れないよう。 どうしよう・・・ ナージャ:ああ、おなかすいたなぁ。 なんだか急に寒くなってきちゃた。 う〜、ブルブル。 手元にあるのは売れ残ったこの4本のマッチだけか・・・。 ・・・1本だけ。 1本だけ火をつけよう。そうしたらすこしは温まるかもしれない。 ナージャはそういうと、 かじかんだ小さな手でマッチを1本シュッとすりました。 するとどうしたことでしょう。 目の前がぱあっと明るくなり、ナージャが見たこともない料理があらわれました。 ナージャ:・・・なに?
ナージャ:とてもいい匂い。 なにかのスープみたいだけど、でもこんなの見たこともないわ。 ちゃちゃちゃちゃ、ちゃんちゃん、 ちゃ〜ら〜ちゃちゃちゃ〜(←小白竜のイントロ) 紅蘭 :リメェンバ〜、大空舞う〜白金のつばさ〜 ニイハオ〜〜!ウチ、李紅蘭アル〜! ナージャ:うわっ、びっくりっ! 紅蘭 :あんさんがこの料理を見たことないの、当然アルよ。 これは遥か遠く東の果て、チャイナの料理アル。 ナージャ:・・・チャイナ? 紅蘭 :そうよ。 この時代は「清国」とゆうたアル。 ナージャ:ああ、ちょっと前に我がイギリスと戦争して負けた国でしょう? 紅蘭 :ああ、知ってるアルか。 大人になったら勉強したらええアル。 イギリスがどんな汚い手ェ使うて戦争してるかをな。 まあ今日はそういう話しちゃうアルよ。 可哀想なあんさんにこの「ふかひれ姿煮」と 「中国茶&ごま団子セット」をごちそうして・・・・・・あ、もう時間や。 しゅぽっ ナージャ:・・・あれ? 消えちゃた。 いまの、なんだったのかしら? そしてあの歌はいったい・・・ 気がつくとナージャは、燃え尽きたマッチを手に持って、 もといた街角に一人で立っていました。 ナージャは急いでもう1本、マッチをすりました。 紅蘭 :おう、来たアルな! ナージャ:やっぱり、マッチに火をつけるとこんな光景が見えるんだわ。 不思議ね!! 紅蘭 :ハイ、そういう仕様。あんまり時間ないアルよ。 さっきの料理は消えてもうたから、次の調理アル。 「紹興酒&春巻」と「焼売&小龍包」やアル。 ナージャ:このシューなんとか、なんだかお菓子みたいね。 シュー・ア・ラ・クレームっていう名前の似たお菓子が 海の向こうのフランスにあるらしいけど。 解説
紅蘭 :さっさと食わんと、また消えてまうでアルよ。 ナージャ:わ〜い!いただきま・・・ あの、フォークかスプーンは? 紅蘭 :この「箸」を使うアル。 ナージャ:この棒?ええと、こうかしら。(グサッ) 紅蘭 :ん〜〜〜、・・・ま、ええか。 ナージャ:では改めていただきま〜パク、 あひぃっ!あひひひひ! 紅蘭 :あ〜、そら熱いわ。 出来立てやさかいなぁアル。 タコ焼きと一緒で外側はちょっと冷めてても中アツアツ。油断大敵アル。 ナージャ:あふっあふっ、何か冷たいもの・・・これ冷たい紅茶? ごくごくっ、・・・ブーーーーーッ! ペペペッ!なにこの飲み物。 紅蘭 :それは紹興酒というお酒アル。 ナージャ:子供にそんなの出すなぁ〜! 紅蘭 :おっと、そろそろ時間アルよ。 ほなさいなら〜。 しゅぽっ。 ナージャ:・・・消えちゃった。 お料理の味も熱さも・・・ シュー何とかは味わう暇もなかったなぁ。 よおし、リベンジだわ! (シュッ) 紅蘭 :いらっしゃあい。 お次は豪華やで。清の宮廷料理「北京ダック」と「渡り蟹の炒め」アルよ。 解説
ナージャ:これ、ガチョウの丸焼き? これなら見たことあるわ。 クリスマスなんかによくお金持ちの人が食べるんでしょう? 紅蘭 :これはガチョウやなくてアヒルや。 似てるけどちゃうんアル。 ナージャ:こっちは・・・インビット? 紅蘭 :に、・・・似てるけどちゃうんアル。 ナージャ:まあいいわ。いただきま〜す。 紅蘭 :哈ッ!(ビシッ) ナージャ:いたいっ!なにするのよ! 紅蘭 :北京ダックは肉を皮ごとナイフではいで、タレをつけて、 そこにある葱やなんかと一緒に荷葉餅で包んで食べるんや。 仮にも宮廷料理やで。正しい方法で食べなアカンあるよ ちょっとまってな、今そいだるさかい。 ナージャ:ん〜、じゃあこのインビットはどうやって食べるの? というか、これはどこを食べるのかしら・・・。 紅蘭 :ああ、こっちにはカニ料理は基本的にないんやったなぁ。 これは中の身を・・・ しゅぽっ ナージャ:きえちゃった! あ〜もう!面倒なことばかりいってまた食べられなかったじゃない! ・・・あのアヒルの丸焼き、おいしそうだったなぁ。 マッチ、最後の1本か。 よおし、次は間髪いれずに食べるわよう! (シュッ) ナージャ:ラッキー!今度は棒じゃなくてスプーンがついてる! 紅蘭 :へいらっしゃい。 お次は「エビチリ」と「炒飯」アル。 ナージャ:ちゃあはん!バクバクバクバクバクバクバクバク〜〜〜〜ッ! って、うえ〜〜!?なんかへんな舌ざわり〜! 紅蘭 :それは「米」というて、麦みたいな穀物の一種アル。 それを茹でて炒めて・・・ ナージャ:えびちり!バクバクバクバクバクバクバクバク〜〜〜〜ッ! って、うえ〜〜!?なにこれ、何かの虫? 紅蘭 :うん。 ナージャ:うそー! 紅蘭 :嘘や。それはシュリンプ。 ナージャ:ああ、これが。 初めて食べたわ。
紅蘭 :お、30秒で完食やな。おめでとーーー! ではお勧めデザート、杏仁豆腐でぇ〜す。 ナージャ:なあに?この動物。 オー・プリティ♪ 紅蘭 :これは大熊猫(ターシォンマオ)という生き物なんや。 いちおう、伝説の生き物として中国では 紀元前から存在は知られてたんアルけど、 ヨーロッパに紹介されたんは30年前の1869年やって。 ナージャ:ふうん。 紅蘭 :ま、お食べ。
ナージャ:あの〜、この幻、まだ消えないの? いつもならそろそろマッチの火が消えて、あの寒い通りに戻されるころなのに。 紅蘭 :30秒完食ニューレコード達成の フードファイター・イングランドチャンプにご褒美で無期限延長アル! 「中華街」に続いて「和食処」「ファミレス」「デザート屋さん」も ぜ〜んぶご馳走させてもらいますアル! ナージャ:やった〜! 紅蘭 :さあ、どんどん持ってくるでぇ〜〜! ナージャ:わ〜〜い!! ナージャ:う〜〜ん、むにゃむにゃ・・・ ナージャ:紅蘭、もう食べられないよう・・・・・でもおかわり〜〜・・・ すぴー・・・すぴー・・・・ ナージャ8歳の見る夢は食べ物の夢。 ナージャの運命の歯車が動き出したり、 ナージャが色気づいたりするのはまだまだ先のことのようです。 おしまい。 (って、夢オチかよ) |
2003年4月20日 0:55:48