菊姫:東京じゃのう、都会じゃのう。すごいのう!
たまき:姫さま〜、待ってください!
    はしゃぎすぎですよう。

(ズシーン…ズシーン…)
 菊姫:おおっ、たまき殿見るがよい。あれが有名な東京タワーじゃ!
    テレビで見た通りじゃ!
    ほぅほぅ、光り輝いて綺麗なものじゃのう。
    わらわは本当に東京に来たのじゃのう。
    そうじゃ、たまき殿。
    わらわのカメラ付きマジカル携帯電話で、
    東京タワーをバックにわらわの写真をとってもらえぬか?
    母上に送るメールに添付するのじゃ。

たまき:…この携帯、マジカルなんですか?
(ズシーン…ズシーン…)

菊姫様記念撮影♪

たまき:じゃあ姫さま、撮りますよ〜。
    笑ってくださ〜い。

(ズシーン…ズシーン…)
 菊姫:…のう、さっきからなにやら地響きのような音が聞こえるのじゃが。
たまき:ああ、東京じゃあ年末年始によくこういうことがあるんですよ。
    気にせず写真を撮りましょう。
    ほら、そんな顔の写真を送ったらお国のお母さんが心配しますよ?

(ズシーン…ズシーン…)
 菊姫:うむ、そうじゃな。では気を取り直して、頼む。
たまき:行きま〜ス。
    円周率小数点以下第6位は〜?

 菊姫:に〜…
(ゴオォォォォォォォォーーーッ)
東京タワーこっぱみじん
ズドーーーーーーーン
ピロリン♪
 菊姫:ああっ、東京タワーが!?
たまき:あ〜、あれゴジラのしわざですよ。やってくれましたねえ…
 菊姫:ゴジラじゃと?
たまき:さっき品川に上陸したってニュースでいってたけど、こっちに来たんだ。
    おっと姫さま、見てください!
    さっきの写真、ちょうど爆発の瞬間が撮れましたよ。

(ズシーン…ズシーン…)
 菊姫:じゃあさっきから聞こえるあの地響きは…
    というか、ゴジラ?あれは本当おったのか!?

たまき:ええもう、最近は毎年東京のほうに来ちゃって大変で。
    さてと、この様子だと六本木方面も危なそうですから…、
    姫様、お台場のほうにでも遊びに行きましょうか。

(ズシーン…ズシーン…)
 菊姫:東京は怖い街じゃと噂に聞いてはおったが、…これほどとはのぅ。
たまき:慣れれば大丈夫ですよ♪
 菊姫:そうかのぅ…
たまき:じゃあ、送信、と。
 菊姫:これ!母上にそんな物騒な写真を送るでない!!

(ズシーン…ズシーン…)
                            ※この物語はフィクションで、その上「たまきの日記」本編とはなにも関係ありませんヨ

などと、関係ないコントから始まりました今回は、
2003年末に公開された映画「ゴジラ×モスラ×メカゴジラ-東京SOS-」です。
思い切りネタバレ上等の進行でいきたいとおもいます。
「見に行く前だから内容は知りたくない!」という方は絵だけ見て文章を読まないことをお勧めしますが、
…それならそれでさっさと見に行ってください。もう劇場公開は終わりますよう。


さて1999年の末に公開された「ゴジラ2000」とそれに続く「ゴジラ×メガギラス」「ゴジラ×モスラ×キングギドラ」は、「ゴジラ(1954)」の初代の設定を引き継ぎつつ、どれも独立した内容の映画だったわけですが、現在公開中の「ゴジラ×モスラ×メカゴジラ-東京SOS-」(以下「GMMG」)はそのパターンをやぶって、前作の「ゴジラ×メカゴジラ」(以下「G×M」)の完全な続編として作らており、その歴史・背景・人物から怪獣にいたるまで同一の設定で作られた映画です。東京湾に沈んでいた初代ゴジラの骨を引き上げ、これを元に作り上げられたゴジラのサイボーグともいうべきロボット「三式機龍」と、それを運用する特生自衛隊と機龍隊とゴジラの戦いの物語です。

3式機龍、夜の街にガオー
去年とほとんど同じな機龍のバイダイのソフビフィギュア。わかりにくいですが、武装と右腕がリニューアルされてます

簡単なあらすじ

ゴジラと機龍が品川で戦ってから一年後。中条博士のもとに小美人が現れます。博士は「モスラ(1961)」でインファント島に行き小美人と出会い、また興行主で人形者の(←当サイト独自解釈)ネルソンにさらわれた小美人を助け出した、あの中条博士その人なのでした。小美人は「死者の眠りを妨げてはいけません。ゴジラの骨を海に返してください。」と博士に訴えます。休暇で遊びに来ていてそこに居合わせた、博士の甥で機龍の整備員でもある中条義人は「ではどうやってゴジラの脅威から日本を守るのか」とたずねると、小美人は「モスラがゴジラと戦います。もしゴジラの骨を海に返さないならモスラも人類の敵になります」と答えるのでした。などなど言いたいことを言って消える小美人。彼女たちがいた場所にはある模様の描かれた小さなプレートが残されていました。博士は旧友である五十嵐総理に直接会い、小美人からのメッセージを伝えますが、総理は「モスラは過去に、東京を始め世界各地の都市を破壊した怪獣だ、信用できない」とはねつけます。そんなおり、ゴジラがまた日本に近づいているという観測情報がもたらされました。機龍は、先の戦いで損傷した右腕は完全機械化して修復しましたが、必殺兵器「アブソリュート・ゼロ」は修復できないままでした。そのためアブゼロの代わりに三連ハイパーメーサー砲を胸部に取り付け、差し迫った脅威に対抗することになります。そしてついにゴジラは日本近海に出現。海上自衛隊の護衛艦隊と交戦ののちこれをすり抜け、品川埠頭に上陸し、陸上自衛隊の猛攻撃をものともせず、機龍のいる八王子を目指し侵攻を開始します。しかし機龍は政治的な理由から出撃命令は出ず、待機のままでした。そんなとき中条博士とその孫によって召喚されたモスラが飛来し、ゴジラと戦いを始めます。最初は善戦していたモスラですが、次第に衰えていきます。モスラの毒燐粉攻撃を見た中条博士は、モスラの死期が近いことを悟るのでした。ゴジラの熱線の直撃を羽にうけ、もはや戦う力を失ったモスラ。その姿に五十嵐総理はついに機龍出撃を決断するのでした。虎ノ門あたりを舞台に、いま機龍とゴジラの最後の戦いの火蓋が切って落とされたのです!
さて、ここからはこの映画を見て私が思ったことをつらつらと、合成画像と一緒に。

主人公の交代
続編とはいえ主役はあくまで怪獣なので、人間側の配役はたとえ主人公であっても変更になるのが東宝怪獣映画の掟です。過去に同じ役者が同じ人物の役で出演した例はありますが(昭和では志村喬、平成では小高恵美など)、しかし主役レベルは必ず変更されてきました。今作「GMMG」も例外ではなく、主人公は前作「G×M」の家城茜(釈由美子)から、中条義人(金子昇)に替わっています。しかしこの映画の面白いところは、普通にただ交代するわけではないところです。家城茜(釈由美子)が前作に続いて出演し、アメリカへ研修に行く直前の茜が義人と機龍について話すシーンが、かなり長めに用意されているのです。前作と今作の主人公のツーショットはとても印象深く、描かれ方も丁寧で、手塚監督が前作を大事にしているのが伝わってくるシーンでした。義人は整備員ですから茜と役割的にはかぶらないので、心情的には今回も機龍オペレーターは茜でいってほしかったんですが、毎回新ヒロインを出したいとか東宝にもいろいろ事情もあるんでしょう。もっとも、その新ヒロインの如月梓(吉岡美穂)は茜よりもセリフが多いにもかかわらず印象が薄く、しかもそのセリフは棒読みでただのグラビアタレントぶりをいかんなく発揮し、完全に茜を演ずる釈由美子に負けていました。やっぱりヒロインは替えないほうがよかったんじゃないかと…

モスラの中条博士
「GMMG」と前作「G×M」は、「ゴジラ(1954)」から続く映画であり、またその世界観に、「大怪獣バラン(1958)」「モスラ(1961)」「サンダ対ガイラ(1966)」「決戦!南海の大怪獣(1970)」などの単独の東宝特撮怪獣映画を取り込んだ設定の映画です。このうちの「モスラ(1961)」が、今回の「GMMG」において重要な作品となっています。実は「GMMG」は前作「G×M」の続編でありだけでなく、「モスラ(1961)」の続編でもあるのです。「モスラ(1961)」で中条博士を演じていた小泉博が、43年ぶりに「GMMG」でも同じ中条博士を演じていて、両作品の橋渡しとしても非常に重要な役どころとなっています。ただ「GMMG」を見に行った人の中でこの「モスラ(1961)」を見たことがある人、さらにその内容を覚えている人がいったいどれほどいたのか、はなはだ疑問ではあります。わたしはわりと最近見たので内容こそ覚えてましたが、共演のフランキー堺の印象が強くて小泉博のことはあまり覚えてなかったというのが正直なところでした…。

呼ばれて飛び出て
東京に飛来したモスラ。バンダイのガシャポン、HGシリーズのモスラ2004を使用しています。

今のお子様には「VSデストロイア」のあとに作られた「モスラ(1996)」「モスラ2海底の大決戦(1997)」「モスラ3キングギドラ来襲(1998)」のほうが基本かもしれないし。試みは面白いですが難しいところだったかもしれません。…いや、「モスラ(1961)」をまったく知らないで「GMMG」を見たほうが、かえって中途半端に気にならずによかったのかもしれないし、ん〜、なんともいえませんなぁ。

護衛艦大奮戦!
個人的にこの映画最大の見所でした!いやマジで。過去の作品でも海上自衛隊(映画によっては防衛隊or海上保安隊or防衛海軍)の艦船とゴジラが戦闘するシーンはあるのですが、おおむねこんな感じです。

1:外洋にもかかわらずゴジラが腰から上を海上にさらしてムギムギ前進してくる。
2:模型の艦から花火を打ち出し攻撃するも、まったく歯が立たない。
3:ゴジラに熱線でなぎ払われて全滅。〜終了〜

今までの海上防衛戦力は毎度このような無能ぶりをさらすことに徹してきました。しかし「GMMG」の海自護衛艦隊は違うぞ!いや、結局ゴジラには歯が立たないのは話の流れからして仕方ないんですが、しかしその攻撃の段取りと描写の丁寧さはすばらしく、私は思わず胸をときめかせてしまいました。

1:護衛艦隊が前もって布陣。潜行して日本に迫りくるゴジラをソナーで探知
2:ボフォース対潜ロケット(!)を撃ち込み水中のゴジラを攻撃
3:攻撃を受け、海上に浮上してきたゴジラに対し76mm単装速射砲で攻撃
4:たまらず再度潜行したゴジラを今度は対潜アスロックで魚雷攻撃
5:しかし攻撃は通じず防衛ラインを突破される(損耗ゼロ)

76mm単装速射砲 アスロック・ランチャー
76mm単装速射砲とアスロック・ランチャー。国際観艦式のときの写真です。ボフォースはマイナーすぎて写真ありません。

と、取り逃がしはしたものの攻撃の段取りはバッチリ。しかも実際の護衛艦のロケット発射/速射砲連射の実写映像を入れているもんで臨場感もバッチリ。アスロック・ランチャーのカバーが開き、レールをだしつつ旋回するさまはもう感激ものでした。できれば浮上してきたゴジラには単装速射砲ではなくハープーン対艦ミサイルで攻撃してほしかった気もしますが、絵的には速射砲の方が攻撃のバリエーションがあってよかったです。ここでハープーンだと、この後に続く陸上自衛隊の攻撃ともかぶりますし。

護衛艦対ゴジラ
上と同じく国際観艦式(晴海埠頭)のときの写真の背景に外洋を合成し、ソフビゴジラを合成。
前にいる人は自衛官ではなくお客さん。単装速射砲は薬きょうを前に飛ばすのであそこに人がいると本当は危険です。

ゴジラ上陸・陸上自衛隊も奮戦
大井埠頭と船の科学館のあいだという「×メガギラス」と同じところを進んでくるゴジラ。水中から出てくるゴジラの迫力はなかなかのものです。「G×M」にも似たようなシーンがありましたが、水の描写は格段にリアルになっていました。さて、水際での攻防でも自衛隊は奮戦します。

品川埠頭にゴジラ浮上
90式戦車はワールドタンクミュージアムのもの。ソフビゴジラは劇場限定バージョンです。

主役は、埠頭に配備されながら、突如至近距離に浮上してきたゴジラにあっさりやられてしまった90式戦車ではなく、渋谷をはじめ”東京湾を囲むかたちではるか内陸部に配置された”SSM−1(88式地対艦誘導弾)です。これはトラック積載のミサイルランチャーで、見た目は地味ですが攻撃力は高く、その射程は150Kmにも及びます。ゴジラが浮上すると同時にはるか彼方からこの対艦ミサイルが一斉に発射され、弾道軌道を描いて直上から雨のようにゴジラに着弾するのです。この、怪獣に対するアウトレンジからの攻撃は今まで描いてほしかったもののひとつで、とても溜飲が下がる思いでした。

ゴジラ上陸
88式地対艦誘導弾の攻撃は成功するもののゴジラには効果がなく、ついに防衛ライン突破。

怪獣の攻撃の射程距離なんて知れているわけで、理屈でいえば怪獣に対してこうしてアウトレンジでの攻撃を繰り返すのがベストなはずです。ただ怪獣映画としてつまらなくなるのは必定と思われますので、ほどほどにした今作の描き方が正解でしょう。この映画には90式戦車や88式地対艦誘導弾と搭載車以外にも、89式戦闘装甲車・指揮通信車・軽装甲機動車・96式装輪装甲車などの戦闘車両も登場し、一部マニアのときめき度を上げてくれます。

機龍の右腕の新兵装

迎撃準備完了
最近煙テクを覚えました。周囲の光の色で煙りを描くと、足元のパースの違和感を誤魔化せるうえに、なんだか特撮っぽくいい雰囲気に!

いろいろあって機龍出動!遮蔽物の向こうからホーミングミサイルでゴジラを攻撃など、前作よりも進化した、卑怯かつ燃える攻撃で魅せてくれます。しかし個人的には、今回完全機械化された機龍の右腕に装備された新兵装に注目したいところです。通常はレールガンを取り付けたマニピュレータモードなのですが、スイッチひとつで指が収束し、なんとドリルアームに!!まさにスーパーロボット魂!

機龍、右腕の新兵装
最初からドリル付きのメカは正義側なイメージですが、この「手がドリルに変化する」のってなんか悪役っぽい気がするんですがいかがでしょう。わけもなく「卑怯」って思いました。しかもゴジラの腹に突き刺したあとで回すという凶悪さも発揮!(爆)今回は「メカゴジラ」としては例外的に長いシッポを使った攻撃もありました。この手の攻撃は効果があるようで、怪獣というものにはどうもミサイルや砲弾は弾き返すのに、殴る・蹴る・刺すといったわかりやすい攻撃はなぜか格段に効くようです。対怪獣兵器は、メーサー殺獣光線車やスーパーXみたいな超兵器型ではなく、怪獣とどつき合いの肉弾戦ができるものでないといけない、ということになりそうで、機龍を企画した五十嵐科学技術庁長官(当時・現総理)の先見の明には脱帽です。もっとも、そんなもん作ったからゴジラがまた来たわけですが…。関係ないですが、変形前の機龍の右手って磯野家の人の手みたいですよね。

モスラやモスラ
ゴジラ上陸を知った中条博士の孫は、博士から聞いた話を思い出して、モスラを呼ぶためにひとり街に戻ります。その方法とは、「モスラ(1961)」と同じように、小美人が残したプレートの模様を大きく地面に描くことです。そしてついにゴジラと戦うためにモスラが飛来します。って、話が違うじゃん。ゴジラが上陸してるってのに、いちいち呼ばないとモスラは来てくれないのかよ!!…と、あとで思いました。劇場で見ているときは「モスラ(1961)」でロリシカ共和国の空港に描かれたのと同じ模様だ〜とか感激していて全然気になりませんでしたデス。

ゴジラ進撃
白色LEDのライトで、サーチライトっぽく照らしてみました。LEDライトは光が広がりにくいので、これも特撮っぽくいい感じになります。

さてこのモスラ、この映画での役割はなんだったんでしょう。もちろん「人気怪獣を出して観客動員数アップ」という東宝の意向も80%程はあるのでしょうけど(それか「新怪獣を出して(以下略)」のどっちかだよね、いつも)、それは置いておいて。私はこの映画を見る前は、ゴジラと機龍のあいだに「モスラ」が入ってくることに違和感を覚えていました。機龍は「リアル」な怪獣なのに対し、モスラは「ファンタジー世界の怪獣」というイメージがあり、双方相容れないもののような気がしたからです。しかし実際に映画を見てみるとそんな心配は杞憂で、両者が共演することでリアルをファンタジーで包んだような不思議なイメージの作品になっていました。また、モスラ&小美人のファンタジーチームは中条博士とその孫が担当し、リアル系ロボ機龍は中条義人と機龍隊の仲間が担当し、相容れないものを2つに分けた上で、双方が絡み合いながら話が進んでいくところなど、うまく構成したものだと思いました。

ゴジラ対モスラ
ゴジラを迎撃するモスラ。引っ掻いたり引っ張ったりと、一生懸命がんばります。…が。

しかし今回の話の発端となる小美人達の日本政府に対する要求、これはちょっとうまくないと思いました。それはつまり「ゴジラの骨を海に返せ」「そのかわりゴジラとはモスラが戦う」、しかしその要求に従わぬ場合は「モスラも人類の敵となる」という要求です。「一般人にそんな一国の命運を握りかねないこと要求されてもな〜」という気もしますが、博士は”たまたま”五十嵐総理とお友達だったおかげでラッキーなことに政府のトップレベルに一気に話が伝わりました。まあそういうコネは"ありえない、とはいえない”ものなので十歩譲ってまあいいとして、問題なのは命の恩人の中条博士を懐柔しつつ脅迫しているその要求内容です。「現ゴジラ」は「先代ゴジラ」の骨が引き上げられたことで約50年ぶりに日本に現れたのですが、それは映画の設定であって登場人物たちはそうと知りません。(そういう説はあるが証拠も確信もない)なので機龍を解体して「先代ゴジラ」の骨を海に返せば「現ゴジラ」ももう来なくなるだろうことは観客にはわかりますが、登場人物にはそうは確信できないわけです。小美人がこの事を教えてあげれば話は割とスムーズなのですが、知ってか知らずかそのことには触れぬままでした。ようするに脚本はあえてこの事をぼかしたまま登場人物に、この真実抜きで機龍廃棄の決断ができるか、そしてそれは正しいのか、ということを問いかけているわけです。話の流れからすると「廃棄しよう」という方向がテーマ的に正しいようですが、しかし私はそれは間違っていると思います。なぜなら、そこに明瞭な危機がある場合、それから自らの身守るための力は絶対に必要だからです。またその力を他者に全てゆだねるのもナンセンスです。しかも国家の命運がかかった安保条約なのに、口約束でしかも伝言で済まそうとするし。相手は謎の妖精だし。だいたい要求が聞き入れられないなら敵になるぞというなら、そっちから先に攻め滅ぼし(それはやりすぎ)…、ともかく、承服できない要求ですよね。五十嵐総理も突っぱねて当然です。

さて「現ゴジラ」がなんで「先代ゴジラ」の骨を追いかけてくるのか、その理由ははっきりとわからず、これも実は謎なんですが、小美人の「ゴジラの骨を海に返してほしい」という要求もまた謎です。我々日本人は一般的に、死体は火葬してお墓に入れるもの、魂は天国に行くもの、と思っています。(正確には、極楽浄土は仏になるための修行の場であっていわゆる天国ではないのですが細かいことは超省略)しかし、世界的に見ると火葬は実は珍しい風習だったり、死後の魂の行方には感心があっても、鳥に食べさせる・川に流すなど死体そのものの保存には無頓着な文化もあったりと、死者の弔い方にもなかなかバリエーションがあるものです。宗教や文化によって弔う方法が違うわけです。当然「なにを持って弔いとするか」「弔う対象はなにか」というのも違ってくるわけです。だからゴジラの「おこつ」にこだわる妖精や怪獣に妙に違和感を感じてしまったというか、日本的なやつらだな〜と思ったというか。なんか変ですよね。「帰巣本能で日本に来る」説のあったゴジラはやはり日本人なのかもしれません。
しかしそれも、百歩譲ってまあいいでしょう!小美人にもゴジラにも、謎ながらそれぞれなりの宗教上の都合がきっとあるのでしょう。信教の自由は尊重せねばなりません。ですが問題は、それと関係ありつつも違うことなのです。私がこの映画を見ていて一番思ったのは「モスラがかわいそう」ということです。小美人の「ゴジラとはモスラが戦う」しかし従わぬ場合は「モスラも人類の敵となる」という要求によると、モスラはどう転んでもゴジラか機龍(人類)と戦わなくてはいけない運命なのです(もしかしたら両方と)。なんという悲劇でしょう。モスラは、ゴジラを追っ払うのが関の山の強さの怪獣ですし、防空能力が異様に高そうな機龍にはまったくかなわない気がします。小美人のやってることは例えば、ガン飛ばしあっているフリーザ(最終形態)と悟空(スーパーサイヤ人)に対してブルマが、「戦いはやめなさい!さもないと私の旦那が相手になるわよ!ねッ、ヤムチャ!」とつっかかるようなもんです。なんでモスラがそんな窮地に立たされているかというと、小美人が「海にゴジラの骨を返してほしい」と考えているからなんですが、じゃあそのためにはモスラの命はどうなってもいいのでしょうか。小美人にとっては、モスラの命は骨より軽いのでしょうか。

モスラ、華麗に回避
ゴジラの熱線をかわすモスラの勇姿。流れ弾が東京タワーを直撃しちゃいます。こういう合成するの、すげー面倒だけど好きです。

しかもどうもモスラはこの戦いで死ぬことが最初から予想されていたようで、その予備戦力としてモスラは前もって小笠原に卵を産んでおいたわけです。なんとも悲壮な覚悟です。そしてゴジラとの戦いでモスラが力尽きるころ、その卵から双子の幼虫が誕生します。やあ、新しい命の誕生ですすばらしいです。でもその2匹も生後数分で即時実戦投入なのです。母親だけでは飽きたらず、その子供達までも命をかけてゴジラと戦わねばならないのです。海を割り一路死地へ突き進む双子の幼虫の、健気にしていたいけないその姿。運命に導かれたモスラは東京に向かうのでした。生まれたばかりの幼い命もゴジラによって露と消えてしまうのでしょうか…。などとわたしは心の中で小美人に突っ込みいれながらも、かえって感情移入しまくり、モスラ萌え萌えで映画にのめりこんでいました。そして物語はついにクライマックスを迎えます。がんばれ双子の幼虫たち〜!
…小美人に翻弄されるモスラの過酷な運命、しかしそれも千歩譲ってまあいい!モスラなりに考えがあるのかもしれないし、幼虫には萌えたし、決戦の結末もわたし的には納得の出来だったので結果的にいい!

問題はですなー、戦いが終わって小美人たちはインファント島に帰るんですが、そのさい、ゴジラの熱線で焼かれ四散したモスラ成虫の骸を、野ざらしのまま残して行っちゃうんですよ。ゴジラの骨の処遇についてはうるさいくせに、命がけで戦ったモスラの骸はいいのかよ!死して屍拾うものなしかよ!ひどいぞ小美人!
…ね、モスラがかわいそうでしょ?

機動隊のバスがいなければ横断歩道の真ん中で正面から撮りたかったんですが
モスラを屠り、国会議事堂に迫るゴジラ。これ以上進むと皇居なのでいろいろまずいです。
議事堂へはこの画像のために夜に撮影に行ってきました。


職務質問されましたが、まあ夜景を撮っていただけなので問題ありませんでした。これがSDの撮影のときだとカメラに加えて怪しげな楽器ケースを持ち歩いていたりするので、「ちょっと荷物を出してください」などいろいろシャレにならない事態が想定されます。
迎え撃つ高機動形態の機龍。いよいよ最終決戦です。
ちなみにイラク関連でテロ予告があったりのこのご時世。国会議事堂前は機動隊がバス3台につめて常に警備に当たってます。夜間撮影でうろうろしていたら職務質問されました。ここと、あとアメリカ大使館の近くで。(笑)


1999年末の「ゴジラ2000」から始まった新シリーズも今回で一区切り。もっと機龍シリーズを見たかった気もするんですが、(「メカゴジラ×ガイガン×キングギドラ」とかさぁ)オチもついたし仕方ないですな。今年の年末にはゴジラ50周年作品として大作が予定されているそうです。初代のリメイクとかだたらいなぁ。なかなか楽しみなのですが、なんということでしょう、なんでも宮崎駿監督の「ハウルの動く城」が製作の遅れから11月までずれ込んでの公開となるそうで、年末公開のゴジラとぶつかりそうになってしまいました。ジブリアニメの前にはゴジラ50周年なんて霞んでしまいそうです。どうなるんでしょうか。劇場に足を運ぶ人が増えるという相乗効果でゴジラにもお客さんがはいるといいんですけどね。
いっそハム太郎と手を切ってジブリと組むとか…。

機龍3バージョン。去年の機龍も3バージョン持ってます。
ソフビ機龍です。右が重武装型、左が高機動型。中央の黒いのは劇場限定の機龍ブラックバージョンです。あと高機動型のブラックもあるらしいですが未確認です。

機龍かっこいいなぁ。今回は機龍は夜景との合成オンリーで、まだ合成したりない気がしますので、今度またいずれ、機龍ネタをやろうと思います。
では。

2004年1月15日 21:42:07