特撮メカコレクション
東宝マシンクロニクル



いままでガレージキットくらいでしかお目にかかれなかった、
東宝特撮映画に登場した超兵器の数々を精密に再現した、塗装済み完成モデルです。

…え〜、ところで、おそらく皆さん気になっていることと思いますが、
上のたま坊の扮装はですねぇ、「怪獣総進撃(1968)」に出てくる特殊部隊の制服なのです。
本当は手袋・長靴までオレンジ(というか黄色)でトータルコーディネイトされています。
このヘルメット、調味料入れのフタの下に透明の板を巻いただけのとっても安普請なものですが、
「怪獣総進撃」に出てくる隊員達のヘルメットもほんとにこんなデザインです。
いい大人がそろってこんな格好をしている画面は、結構インパクトがあります。

たま坊は何でこんな格好が似合うのかなぁ…。
あまり似合うので、ここでポートレイトを数枚。(笑)



オレンジのスーツはアゾンの”ヒーローベース”です。
映画の撮影で使われてたスーツはゴム製のブカブカのスーツなので、
そのブカブカ感を再現するために、タイトな”ヒロインベース”は採用しませんでした。
それにしても、撮影中は外の音が入らないように窓も戸も締め切り、
撮影用ライトを煌々とたく為その熱でとても暑い現場で、
ゴム製ツナギを着て演技していた出演者のみなさん、さぞかし死ぬような思いをしたでしょうね。

  

こんな衣装を作るのだけで丸1日かかっちゃったのって、
やっぱり人生の無駄ですか?

メーサー殺獣光線車
フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ(1966)



最近のゴジラ映画ではおなじみのメーサー車、
その元祖、オリジナルといえるのがこの「サンダ対ガイラ」に出てきたメーサー殺獣光線車です。
この映画の中盤において、陸上自衛隊はガイラ殲滅を目的とした”L作戦”を展開するのですが、
これがもうのちのち語り草になるほどカッコイイのです!
そのシーンのフィルムがのちの怪獣映画でも流用されてしまうほどカッコイイのです!

劇中ではこの”L作戦”が物資の輸送と配置、
森の中に高圧用電源コードを苦労して敷設するなどの作戦準備段階から、丹念かつ克明に描写されます。
一見不要な描写なのですが、これがあるからこそ、ガイラを待ち構える待機状態での緊張感と、
作戦開始と同時に繰り広げられる大特撮パノラマの昂揚感が生まれるのでしょう。
高鳴る鼓動と伊福部マーチ、
逃げるガイラを追尾するメーサーの光線に横殴りになぎ払われていく大木たち、
ああ、特撮映画の至福と恍惚の瞬間ここにあり!


L作戦をイメージ。
メーサー車同様、劇中で大活躍する61式戦車もあわせてみました。(ワールドタンクミュージアム4)

この映画の問題点といえば、中盤のこのL作戦で盛り上がりすぎるため、
このあとの展開がなんかどうでもいいような気分になってしまうことでしょうか。
私だけ?

α号
緯度0大作戦(1969)



「緯度0大作戦」見てぇ〜〜〜〜〜!
この映画、アメリカのドン・シャープ・プロという映画会社と東宝の共同で作られた日米合作映画なのですが、
その後このドン・シャープ・プロが倒産、出演ハリウッド俳優の権利関係がわやわやになり、
ソフト化権が宙吊り状態になってしまい、今現在、日本国内ではビデオソフト化されてない幻の大作映画です。
「差別的」などの理由でソフト化されていない映画は結構ありますし、まあそれはしかたがないのですが、
この「緯度0大作戦」みたいな理由はなんだかやり切れませんね。だって結局「カネ」ですよ。

聞くところによると駄作らしいのですが、一度は見てみたいものです。
私は、たとえ全体的にはダメな映画でもどこかキラリと光るところがひとつあればいいじゃん、
昔の映画を今の技術基準や演出基準で見るのっておかしいじゃん、
という鑑賞姿勢の人なので、案外楽しめるかもしれないです。
ダメなもんはダメだけどね。(笑)

そんな感じで不幸な生い立ちなこの映画の主役メカ、潜水艦α号です。
α号は海底2万メートルに作られた理想郷”緯度0”が誇る非武装の潜水艦で、
悪の天才科学者マリクの操る潜水艦黒鮫号と雌雄を決します。



こやつ、飛びます。
この辺、さすがは「ふしぎの海のナディア」のノーチラス号のモデルとなっただけはあります。
キットは、翼を付け替えることで潜水艦状態と飛行状態が再現できるようになっています。

上の合成画像では船尾に吹き出す炎を描き込みましたが、
どうやら劇中では煙が出るだけのようです。

黒鮫(くろざめ)
緯度0大作戦(1969)



悪の天才科学者、というかマッドサイエンティストのマリクさんの作り上げた武装潜水艦。
この黒鮫号は名前のとおり鮫を模したと思われる、曲線で形作られたボディを持った潜水艦で…、
と、それ以外はよく知りません。(汗)

やはり見たことのない映画の内容やメカについてあれこれいうのは限界がありますなぁ。
言えるのは、「α号も黒鮫号もかっこいい」ということくらいでしょうか。


夕日を背負った黒鮫号
君が気に入ったならこの艦に乗れ。
いつかなくした野望がここにだけ生きてる。

轟天号
海底軍艦(1963)



地上世界を侵略せしめんと暗躍するムウ帝國。
世界を救う最後の希望、それは旧帝國海軍が秘密裏に建造していた海底軍艦・轟天号であった。
神宮寺大佐はついに決断する。
「海底軍艦はこれより、ムウ帝國撃滅の為出撃します!」

物語のプロットは押川 春浪の「海島冒険奇譚 海底軍艦」からのもの。
明治時代の小説家で、”海底軍艦””轟天号”という、字面、響き、ともに超素晴らしいこのネーミングも
押川 春浪の手によるものです。彼はまた”冒険小説”というジャンルの産みの親でもあり、
少年向けの冒険小説専門誌も発行したりしました。
青空文庫ではこの作家の「本州横断 癇癪徒歩旅行」を読むことができます。

訂正:
資料参照の際に早とちりをしてしまいました。小説版「海底軍艦」の艦艇名は轟天ではなく、
轟天号という名前は押川春浪がつけたのではないようです。小説版の名前は目下調査中です。2004年10月17日 2:12:54



飛びますよね。
上の「緯度0大作戦」のα号、「地球防衛軍」のα・β号などもそうですが、
当時の特撮映画ではこういった巨大空中要塞が夢の超兵器としてよく描かれました。
その中でも轟天号は空中、水上、水中、地中どこでも行けるスーパーメカです。
ドックの中を自走したりしていたので、地上走行もできるのかもしれません。

ところで、海底軍艦の敵であるムウ帝國の女皇帝さまは、気品があってプライドが高くて、
私の「お姫様属性」を直撃するキャラなので、私は途中からこっちに感情移入して見てしまいました。
この皇帝陛下、なんとも最後は可哀想なことになってしまいまうのですが、
まああれです、私に免じて世界征服の野望くらい許してあげてほしかったです。(何様?)

スーパーX
ゴジラ(1984)



ゴジラ30周年作品として製作された1984年版ゴジラ。
いろいろ欲張りすぎて消化不良を起こした内容のため、全編に中途半端さが漂う作品に仕上がっています。
見ていると「やりたいことはわかるんだけどね…」という生暖かい気持ちでいっぱいになります。
私はこの映画は劇場で見たんですが、そうか、あれからもう20年もたっているんですね。

そんな「1984ゴジラ」ですが、これにもスーパーメカが登場します。
その名も「スーパーX」。
実はわたしはこれがけっこう好きです。

あまりに自衛隊の兵器っぽくない名前だとか、首都防衛というけど何と戦う為の兵器なのかとか、
そもそもこんなの飛べるわけないだろとか、そういう瑣末なことを気にしてはいけません。
これは轟天号から続く、東宝の「空中要塞」の流れを汲む兵器なのです。
轟天号が飛べるならスーパーXだって空を飛べる!
湖の水も飲み干せる!
そこにしびれる憧れるぅ!
スーパーXは首都防衛のため、”あらゆる敵”と戦う為に作られた超兵器なのです。

ただ、ゴジラの真正面に浮かんで「照明弾発射!」「カドミウム弾発射!」を繰り返すだけって作戦はどうよ。
それだけならスーパーXなんて超兵器はいらないじゃん。


カドミウム弾を搭載した上部ハッチ、左右のミサイルランチャーのハッチ、
先端のクチバシなどが開閉できます。(一部差し替え)

画像は新宿の高層ビル街。
1984年当時はまだ高層ビルも今よりずっと少なく、かなり景観が違いました。
もちろん都庁もまだ建設前で、そこには建設予定の広大なサラ地があるだけでした。
そしてそこでまさに、ゴジラとスーパーXの決戦がおこなわれたのです。

ムーンライトSY−3
怪獣総進撃(1968)


SY−3(えすわい・さん)と読みます。
宇宙空間と大気中を飛行可能で単独で大気圏突入・離脱能力もあります。
月面基地と地球の往復には、SY−3より巨大なロケットブースターを船尾に装着して高速で航行します。
本当に飛べそうなデザインなのが逆に珍しい超兵器。
東宝メカの中でも、デザイン単独でかっこいい部類に入る名機であります。

怪獣総進撃が公開された1968年はウルトラセブンの放送が終了した翌年でありまた、
乗組員が軍人ではなく一種のスペシャルチームのような人たちであることを考えると、
SY−3は、轟天号のような空中要塞というよりも、”ウルトラホーク”や”ビートル機”のような
特殊チームの専用機といった位置付けなのだと思います。

SY−3は着陸するときは横ではなく、逆噴射しつつロケットのように直立状態で着地します。
そして下についているキャタピラで、直立状態のまま横移動したりします。
…ってそれ怖すぎる!
岩とかに乗り上げて倒れたりしやしないかと、スリル満点のすごいタキシングですね。


カナード翼を開き忘れてました。はうあ〜っ!
…まあ開かないほうがかっこいいですけど。

キラアク星人の陰謀渦巻く怪獣島に急行するムーンライトSY−3。
機長の山辺克男がそこで見たのは、キラアク星人のしもべとなった恋人・真鍋杏子の姿だった。
キラアク星人にコントロールされた怪獣が世界中の都市を破壊する!
燃え上がる都市!
開き直る吉田博士!
地球はキラアク星人の手に落ちてしまうのか!
全てはSY−3の活躍にかかっているのだ!いやマジで!

1967年にウルトラセブンの放送が終了しており、
「怪獣総進撃」が公開された1968年にはもう怪獣ブームは終焉を迎えていました。
1963年の「キングコング対ゴジラ」以来ほぼ毎年製作されてきたゴジラ映画も、
そういう情勢をうけていったん終了となることになり、これが最後ということで豪華に11大怪獣総出演が決定。
月基地があり、地球と自由に行き来できるようになった20世紀末の未来世界が舞台で、
宇宙から襲いくる侵略者に対して人類と怪獣がともに戦うという、夢のような映画が製作されました。
それ以前のゴジラ映画ですと、観客が感情移入しやすいように主人公を新聞記者などの一般人に設定して、
ゴジラの起こす事象の周辺を巡ることで物語にからませていくことが多かったのですが、
「怪獣総進撃」は、主人公をウルトラ警備隊のような特殊チームの隊長に設定することで、
人間対侵略者の戦いが主軸のエキサイティングな物語になりました。
特撮マニアの間ではあまり評価の高くない作品ですが、私はこれ大好きです。
たま坊にコスプレさせるくらい。



そう、このオレンジの服はSY−3の乗組員達の制服なのです。
彼らはSY−3に乗り込んでの偵察と戦闘だけでなく、地上で白兵戦、敵基地に乗り込んでの破壊活動等、
ちょっとこき使われすぎ〜と心配になるほど、七面六臂の大活躍をみせます。

そういう感じで、「怪獣総進撃」は最後に一花咲かせようとした特撮大作映画だったのですが、
これが興行的に当たってしまい、「それじゃあ」ということで引き続きゴジラ映画が作られることが決まります。
しかしそれ以降、製作側に情熱の感じられない作品が続き、ゴジラ映画は作品的にも興行的にも
衰退の一途をたどってしまい、1974年の「メカゴジラの逆襲」でついに9年の眠りにつきます。
あそこで終わっておけばよかったのに…
なんだかジャンプの人気連載作品の衰退パターンと似ていますね。

なんでこんな話をしているかと申しますと、それはもちろん「怪獣総進撃」の説明でもあるのですが、
歴史は繰り返すのです。
2004年末、ゴジラ生誕50周年作品「ゴジラ FINAL WARS」が公開されます。
これを最後に、この先10年くらいゴジラ映画を作らないとのことです。
内容は”人気11大怪獣総出演!”
……って、なんか「怪獣総進撃」の状況と似ていませんか?
まさか「好評につき、やっぱ2005年もゴジラ作りますぅ!」ってことはないと思いますが、
思いますが…、ますが……
まあ、少なくとも「怪獣総進撃」にあやかろうという意図はあると推測できますよね。

「ゴジラ FINAL WARS」の監督は北村龍平。
私はこの人のファンなのですが、この決定を聞き期待と不安が入り混じった妙な気分です。
「VERSUS」が奇跡のように面白くて、でもそれ以降パッとしないんですヨねぇ。
なんか映画としてきちんとまとまってしまって、はっちゃけてなくって。
ワンカットワンカットはカッコイイのですが、全体としてみるとなんかダメ。
脚本が原因なのかなぁ。
怪獣映画にどの程度造詣があるのかも不明ですし。
北村龍平監督のインタビューなどもかなり読んでいるつもりですが、
少なくとも怪獣映画について言及があった記憶はないです。
ん〜、どうなるのかなぁ〜。

11大怪獣も気になります。ゴジラと新怪獣を引くと9大怪獣なのですが、
え〜と、まずメガギラスでしょ、デストロイアでしょ……(オイ)
冗談はさておき、”待望のガイガン復活”は難いのではないかと、心ひそかに期待しております。
だた北村龍平監督はスプラッター好きなんで、彼とガイガンの組み合わせは微妙に不安だったりしますが。
ガイガンのカッターに切り裂かれて血がドバーーとか……、あぅ〜
まあともかく、いろいろ楽しみです。

2004年3月15日 23:26:42