11月22日(日)くもり

もう11月も下旬だけど、このへんは暖流が流れていて、今でも結構暖かいです。
・・・・・・泳ぐのにはちょっと寒いかな。
海から来る風がヤシの葉を揺らしながら、通りすぎていきます。
ここからだと、見慣れているはずの景色がとっても綺麗に見えるの。

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 紅蘭:たまきー!どこいったんや〜?
たまき:ここ、こっちこっち!ベランダのほう!

 紅蘭:ベランダぁ?ベランダのどこに・・・・・・。
    あんた、屋根の上で何してんねん。
たまき:遠くまで見えて気持ちいいよ〜。
 紅蘭:ワンパやないねんから・・・・・・。
    ちょっと降りてきてくれる?


 紅蘭:なぁ、うちの部屋の天井裏にこんなもんがあったんやけど。
たまき:紅蘭のじゃないって事は、きっと昔の間借り人の人のだね。
    手帳か本みたいだけど・・・・・・。
    ファスナー開けないとわかんないね。
    なにが入ってるのかなぁ。
    ・・・宝の地図だったらステキだね〜♪




 紅蘭:しるしの付いた地図が入ってたとしてもな〜、
    場所突き止めて掘り返したところで、出てくるんは、
    他人の思い出の詰まった「タイムカプセル」が関の山やで。(笑)

たまき:そっか〜。・・・・・・それは申し訳ないね。(しゅ〜ん)

 紅蘭:古くても、せいぜい4〜5年前のもんやろうな。
    でなぁ、これ、うちらが勝手に開けていいと思う?

たまき:あ・・・・・・まずいよね、考えてみたら。
    どうしよう。ここを借りた不動産屋さんに預けちゃおうか。
    前の人に間違いはなさそうだから。

 紅蘭:やっぱりそうせなあかんよな。
    ほな、今度町に出たときにでも預けてくるわ。

たまき:そうしようね。

 紅蘭:でも・・・・・・この中身、気になりだすと気になるよなぁ。
たまき:そうだね〜。何だろうね〜。
    ・・・・・・って、
だめだよう。(笑)
    これは開けちゃ、
だ・め!
 紅蘭:わかってるがな〜。そのときまで仕舞っとくから、かして。
たまき:はい。
 紅蘭:おおきに。
たまき:・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
 
紅蘭:・・・・・・?
たまき:・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 紅蘭:視線が追っかけとるで。(笑)
たまき:ああ〜、つい、見つめちゃった。
    忘れろ忘れろ!・・・・・・お昼ご飯の支度するよ。

 紅蘭:よろしゅうな。

チャイム:ピンポ〜ン
 紅蘭 :お客はんや。うち、出るさかい。
 たまき:お願〜い。



 紅蘭 :(ガチャッ)はいな。
ジェニー:あら?ごめんください・・・・・・。
     あの、こちらの方?

 紅蘭 :この表札の通りのもんですけど。うち、李紅蘭や。
ジェニー:あっ、ごめんなさい。私はジェニー。
     前に来た時には、別の人が住んでいたもんだから・・・・・・。
     あの、あの、じゃあこれで。

 紅蘭 :前に住んでた人知ってはるん?
     ・・・・・・ふ〜ん、ええタイミングや。
     なあ、ちょっと寄ってかへんか?
     見て欲しいもんがあるんや。

ジェニー:はぁ。

 たまき:お客さん?
 紅蘭 :そうなんや。
     たまきもこっち来て。
     あ、うちのへやにワンパ仕舞っといて。(笑)

 たまき:わかった。
     ワンパー、リンゴあげるからおいで。

 ワンパ:ウルルルルゥ♪

ジェニー:実は、・・・・・・彼とはあまり親しいわけではなかったの。
     年に1〜2回、ここにお邪魔していただけで。
     彼がお引っ越ししたことも、聞かされてなかったくらいだし。

 たまき:男の人が住んでたんだ。
ジェニー:24〜5歳くらいの人でした。
     海が大好きで、そういう雑誌に何か書いていたみたい。

 紅蘭 :これ、その人のもんらしいんやけど、心当たりある?
ジェニー:・・・・・・いいえ。見たことないわ。
紅蘭 :そうか。やっぱわからんか。
ジェニー:ええ。
     でも中を見れば・・・・・・。
(ジ、ジーーー)
  紅蘭 :あっ。
 たまき:あっ!



ジェニー:ど、どうかしました?

 紅蘭 :いや、何でもないんや。(笑)
 たまき:ええっ?・・・・・・ちょっと紅蘭〜、まずいじゃん。
 紅蘭 :開けてもうたもんは、しゃあないがな。
     前向きに行こう、な。

 たまき:・・・・・・。

ジェニー:これは手帳ね。
 紅蘭 :なになに・・・・・・。(パラパラ)
    「このあいだ、あなたはミートパイが好きだと言っていたから、
     今度来たときに食べてもらえるように練習・・・・」
    「あなたはいつも突然来るから、今日来るか、明日来るかといつも思って・・・・。」
    「お祝いにプレゼントを送った。喜んでもらえた。嬉しかった。・・・・・・。」 
     ずーっと、こんなん書いてあるで。(パラパラ)
     ・・・・・・これは?


 たまき:ラブレターの下書き・・・・・・じゃないね。
     この、「今日来るか、明日来るか」って、わかるなぁ。

 紅蘭 :日記みたいなもんかなぁ。
     でも、こないなとこに書いたかて、しゃあないで。
     あ、写真が入ってる。

ジェニー:見せてください。
     ・・・・・・これ、エリーの写真だわ。

 たまき:エリーさん?お知り合いの人?

ジェニー:エリーは私の親友。
     いつも私と一緒にここに来ていたの。
     もう4年くらい前、まだ私たちが学生のころだけど、
     私たち、ここの海で彼に助けてもらったの。
     ゴムボートがここまで流されちゃって、
     降りて泳ごうにも、海面までびっしり海草がはえてて、怖くて・・・・・・。

 たまき:このへんはケルプがたくさん生えてるからね。
ジェニー:それ以来エリーと、さっきも言ったように年に1〜2回、ここに来ていたの。
     彼は優しくて、いつも笑顔で出迎えてくれた。
     この、・・・・・・ミートパイもおいしかったな。


 紅蘭 :で、そのエリーはんは今日は一緒やないの?
ジェニー:・・・・・・ええ。
 たまき:これ見せたら、エリーさんどう思うだろうね♪
     って、・・・・・・見せないほうがいいのかな。

ジェニー:エリーは先月、以前からの婚約者と結婚してしまいましたから。
 紅蘭 :あぁ。
 たまき:そんな・・・・・・。じゃあこの人は?

ジェニー:彼がこんなのとを考えているなんて、思いも寄らなかった。
     きっとエリーも気が付いてないと思う・・・・・・。
     このあいだは、エリーの結婚の相談にも乗ってくれてたのよ。
     ・・・・・それなのに。
     あの人はいつもエリーを想っていたのね。




 たまき:こういうのって、・・・・・・なに?
 紅蘭 :どんなに相手のことを思っても、心を尽くしても、
     肝心な最後の勇気が出なかったんやろうな。

 たまき:告白できなかったってこと?
     ・・・・・・でもさ、
     伝わらないものなの?気持ちって。


ジェニー:あとから思えば、そうも思えるけど、
     でも、好意は好意としか伝わらないのかも。


 たまき:そうか・・・・・・。

ジェニー:これどうしましょう。
     エリーには今更見せないほうがいいです、よね?

 紅蘭 :これは、持ち主に返したほうがええやろな。
     どのみち、そうするつもりでいたんや。
     よし、今日にでも、不動産屋のおっちゃんに渡してくるわ。
     ジェニーはん、これから町まで一緒に行こう。

ジェニー:はい。わたしも新しい連絡先を知りたいですから。
 紅蘭 :ほなたまき、ちょっと行ってくるわ。

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気持ちって、言わなければ伝わらないんだね。
・・・・・・私はるーくさんに言えるかな。
でも、言っても駄目だったら、どうなるんだろう。
それだけが怖いよね・・・・・・。
   

帰ってきた紅蘭は、なんだか元気がありませんでした。
不動産屋さんに手帳は預けてきたけれど、
新しい住所は、わからなかったそうです。

なんだよぅ、元気出してよね。

私はもう寝ます。
お休みなさい。
・・・・・・いい夢が見れますように。


   

 

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