6月26日(土)曇りのち晴れ

たまき:大丈夫、紅蘭?
 紅蘭:ハァハァハァ、息が苦しい・・・。
     もう、ハァハァ、ここには酸素がないんや。
たまき:紅蘭、ねぇ、しっかりしてよ!
紅蘭:ハァハァ、あかん、ハァハァ、今度は指が、しびれてきた・・・

洞窟の中、行けども行けどもそこは暗闇。
あれからどのくらい歩いたのでしょうか。
登っているのか下っているのか、それすらわかりません。
そして今、紅蘭の様子がおかしくなってきました。
なんで、こんな事になってしまったんでしょう・・・。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

たまき:こんなところに洞窟があったなんて・・・。
 紅蘭:なぁ〜、入ってみようや〜。
    おもろそうやんか。

たまき:やだよ。紅蘭一人で行けば?
 紅蘭:ちょっとだけや。な?
    うち、こういうとこ、いっぺん入ってみたかってん。

たまき:だってぇ、・・・クマでもいたらどうするの。
 紅蘭:・・・おらんて。絶対。



たまき:入って、もし迷子になったらどうするのさ。
    誰も助けになんか来てくれないよ。

 紅蘭:せやから、ちょっとだけ言うてるやん。
たまき:ちょっともダメ!
 紅蘭:ほな、最初の別れ道まで。
たまき:それ全然ちょっとじゃないじゃん!!(笑)
    駄目だって。
 紅蘭:別れ道までなら迷う心配ないやんか。
    なんぼ奥に入ったって、Uターンすれば、目ぇつむってても出てこれるで。

たまき:・・・んん。
    その格好で散歩に誘われたときに、何かあるって気が付くべきだったよね・・・。
 紅蘭:やる気まんまんやからな。
たまき:じゃあ、ちょっとだけだよ。
    分岐点があったら、戻ってくるの。
 紅蘭:ホンマ!?やった!!

たまき:こんな小さな洞窟、入ってすぐに行き止まりかもしれないし、
    まあ、ちょっとくらいなら・・・。
 紅蘭:はい、これたまきの懐中電灯な。
    これはその予備の電池。ちょいと重いで〜、気ぃつけて持ちや。
    あとこれ非常食、はい。
    カメラはうちが持ってるさかい、キレイな鍾乳石見つけたら、教えてな。
    ・・・そうそう、鍾乳洞の中って、方位磁石使えるのかな。
たまき:めっちゃヤル気だね。
    普段は懐中電灯の電池なんか、切れっぱなしなのに〜。
 紅蘭:普段はあかんけど、いざというときは張り切り屋さん。
    それがうちのキャラなんやな。
たまき:・・・いばってないで、普段も張り切っておくれ。
 紅蘭:ほな、しゅっぱ〜つ♪
    この道〜、道の向こ〜お〜、何かが〜、何かが待つ〜♪♪
たまき:よくそんな昔の歌知ってるね。
 紅蘭:今、深夜アニメで主題歌になってるんよ。
          ・
          ・



たまき:・・・迷った。
 紅蘭:ん〜、おかしいなぁ。
    こっちが出口にはずなのになぁ。
たまき:やっぱり、引き返すときに別の穴に入っちゃったんだよ。
 紅蘭:せやなぁ。
    別れ道で引き返すつもりが、気ぃつかんうちに、
    だだっ広い空洞に迷い込んでてんなぁ。
    迷ったとしたら、あそこから引き返そうとしたあのときや。
    来た道選んだつもりが、別の道を選んでたんや・・・。
たまき:今Uターンすれば、さっきの空洞に戻れるよ。
    で、空洞についたら、もう二度とこっちに来ないように、
    穴の入り口になにか目印付けてさ。
    それで、今度こそ正しい出口を探そう。
 紅蘭:そうしよか。
    まあ、空洞まで戻れれば、すぐに出口も見つかるやろ。
たまき:・・・すぐに出られる・・・よね?
 紅蘭:まかしとき。
    心配することあらへん。
    空洞まで戻ろ。

たまき:ケイブダイビングって言ってさ、ダイビングで海底洞窟に潜っていくのがあるの。
    ただ潜るよりも危険だし、経験も要るから、私はやったことないんだけど。
    そういうときって、長いロープの端を体に付けて洞窟に入っていくのね。
    ・・・そうすれば良かったね。
 紅蘭:ほんまやな。
    すぐに戻ってくるつもりやったからなぁ。
    まさかこんなことになるとは・・・。
たまき:・・・なんでそんなに危険な思いをしてまで、そういう洞窟に潜っていくと思う?
 紅蘭:スリルを求めて?・・・冒険心かな。
    それとも、周りに度胸あるとこ見せたいとか、
    いや、純粋な学術調査・・・?
たまき:それはねぇ、購入前の下見なの。
    「買いて〜洞窟」だから。・・・ぷふふっ。(≧ε≦)
 紅蘭:なるほどな。
    ・・・ああ、こっからが空洞や。
    なにで目印しよう。
たまき:うぅ〜・・・その辺の石を思わせぶりに積んでおこうか。
    足元を照らして歩くから、もう一度来たらすぐに分かるよ。
 紅蘭:よし。石積んだら、早いとこ出口探そう。
          ・
          ・
          ・
たまき:・・・ないね、ほかの入り口。
    おかしいよ。
 紅蘭:二手に分かれて探したいとこやねんけどなぁ。
たまき:それはやめたほうがいいよ。
    もし懐中電灯が壊れたりしたら、お互いの場所が分からなくなっちゃう。
 紅蘭:うん。うちもそう思うわ。
    そうや、これから長いかも知れん。
    乾電池節約せなならんし、二人一緒におるんやから、
    懐中電灯は一本で十分やろ。うちのは消すで。
    あんたが前を歩いて道を照らしてな。
たまき:う、うん。はぐれないでね。
    絶対に手を放さないでね。
 紅蘭:うん。
          ・
          ・
たまき:この空洞には、頭がやっと通るくらいの穴ならあったけど、
    私達が入ってきたような穴はないね。はっきり言って行き止まり。
    あるのは、妙にでこぼこした、マガマガしい鍾乳石ばっかり。
    ここ、最初の空洞と違う空洞だと思うよ。
    どうしてそうなったかは、わからないけど。
    こりゃ本格的にヤバイよ?
 紅蘭:・・・たまき、
たまき:ん?
 紅蘭:あの、・・・ごめんな。
    うちが・・・こんなとこに誘った・・・ばっかりに。
たまき:やめてよ。
    大丈夫だってば。ちゃんと出られるよ。
 紅蘭:うん。
    ・・・なぁ?・・・たまき?
たまき:なぁに?
 紅蘭:なんか・・・ここの空気、薄ぅなってきてないか?
    ・・・深呼吸せんと、いきが苦しい。
たまき:私は何ともないけど・・・。
 紅蘭:ハァ・・・、ハァ・・・、うちが鍛えてへんからかな。
    ハァ、ハァ、ハァ・・・、
たまき:大丈夫!?紅蘭。
 紅蘭:ハァハァハァ、苦しい・・・。
    もう、ハァハァ、ここには酸素がないんや。
たまき:紅蘭、ねぇ、しっかりしてよ!
 紅蘭:ハァハァ、あかん、ハァハァ、今度は指が、しびれてきた・・・
    たまき、ハァハァ、うち、怖い。



たまき:ああ〜ん、どうしよう。
    大丈夫だよ紅蘭、まだ空気はあるよ。
    落ち着いて。
 紅蘭:ハァハァハァハァハァハァハァ・・・
たまき:・・・指がしびれてきた?
    そうか。
    紅蘭、ねぇ紅蘭。それ、酸素がないんじゃなくて「過呼吸」だよ。
    体の中に二酸化炭素が足りなくなるとそうなるの。
    ゆっくり呼吸して。すぅ〜〜〜、はぁ〜〜〜って。
 紅蘭:ハァハァ・・・、フ〜〜〜〜〜、ハァ〜〜〜〜・・・。
たまき:そうそう。私を信じて、・・・ゆっくり呼吸して。
    ストレスや緊張が、そういう状態を作ることがあるの。
    体の中に二酸化炭素がまわれば、すぐに良くなるよ。
 紅蘭:すぅ〜〜〜〜〜、はぁ〜〜〜〜〜〜。
たまき:今は自分を責めないで。
    まずここから出ることだけ考えよう。

 紅蘭:・・・うん。おおきにな。
    あんたの言う通り・・・、だいぶ楽になってきた。
たまき:良かった。
    こんな時は、慌てたら負けだよ。
    なんとしても、助かろうね。
    無事に出られたら、なにしようかなって、楽しいこと考えてさ。
 紅蘭:・・・出られたら、か。
    うち、この真っ暗なところから出られたら、もうなんも要らん。
    たまきは?
たまき:わたしはねぇ〜、えへ、ひ・み・つ〜
 紅蘭:ええ〜?そんなんずるいで、もう。
たまき:(なんつって・・・。出られたら、ただじゃ済まさないんだから。(笑))
 紅蘭:・・・今、たまき、なんや物騒なこと考えんかった?
たまき:そっ、そんなこと思ってないよ〜♪(⌒▽⌒;)>
    楽しい空想だよ。(笑)嘘じゃないって〜。
 紅蘭:そうか。・・・気のせいか。
たまき:ついでだから、ちょっと休もうか。
    それで、これからどうするか考えよう。
 紅蘭:非常食で腹ごしらえしたら、行こう。
    目印を付けた穴から戻って、どうにかして最初の空洞までたどり着くんや。
    来れたんやから、また行けるはず。
    道はそれしかないで。
たまき:そうしよう。
          ・
          ・
 紅蘭:・・・こんなとこに三叉路があったんやね。
    こら、分かりにくい場所や。
    ふたりで注意してて良かったな。
たまき:最初の空洞からこの穴に迷い込んで、三叉路に気付かずに奥まで行って、
    そこで引き返してきたんだけど、今度は別の空洞に繋がる穴に入ったんだね。
 紅蘭:ということは〜、
    右か左か、どちらかの道に行けば最初の空洞に繋がっているはずやな。
たまき:もう一方は、私達が引き返した穴だね。
 紅蘭:さてどっちでしょう。
    ここで間違えたくないなぁ。
たまき:さっきまでいた行き止まりの空洞から、この三叉路までにかかった時間が
    約10分。
    違う空洞なのに不審に思わなかったのは、
    最初の空洞から引き返したところまで掛かった時間と、
    引き返してから行き止まりの空洞に付くまでにかかった時間が
    同じくらいだったって事じゃない?

 紅蘭:ああ〜もう。ややこしくなってきたなぁ。
    最初の空洞を(

    この三叉路を(

    引き返したとこを(

    行き止まりの空洞を(
)、としようか。
    まず、(
)からきて()を気付かずに通ったうちらは、 ()まで行って引き返し、
    (
)で道を間違い、()に行ってもうたんや。

入り口 =(空洞A)=10分=(B)=5分?=引き返し点C=…(この先は不明)
入り口 =
空洞A=10分=
入り口 =(空洞A)=10分=(B)=10分=空洞D…行き止まり

    今いるのが三叉路(
)で、
    三本の道はそれぞれ(
)()()に続いてるわけや。
    で、(
)から()、()から()の距離が同じくらいというわけやね。
たまき:そ〜なんですよ、紅蘭さん。
 紅蘭:は?
たまき:・・・な、なんでもないよ。
    ともかく、この三叉路(
)から10分くらい進んで空洞()に出なければ、
    その道は引き返し点(
)に向かっていたことになるから、
    そのときはまた、ここ(
)に戻ってくればいいんだよ。
 紅蘭:それにしても往復20分かぁ。まあ、しゃあないな。
    右か左か、ここはカンに任せよか。当たる確率50%や。
たまき:う〜ん。
 紅蘭:・・・早う決めてぇな。
たまき:なんで私が決めることになってるのさ。
 紅蘭:だって、うちが決めて間違いやったら、もう、あんたに悪うて。
たまき:単なる責任逃れな気もするけど・・・、じゃあ私が決めるよ。
    ん〜と、
・・・みぎっ!
 紅蘭:違ってても、うち知らんからな。
たまき:・・・おいおい。
 紅蘭:冗談やて〜。
    そうや、(
)の空洞に行く道に目印入れとこ。
    石コロもないから、切れた電池を置いておくな。
    こうすれば、この三叉路が(
)やっていうしるしにもなるし。
たまき:こんなところに電池捨てるなんて抵抗あるけど、しょうがないか。
 紅蘭:じゃあ右に10分くらい進むで。
    空洞もそうやけど、今度は別れ道を見落とさんようにせんと。
    もう一度道を間違ったら、もう絶望的やでな。
たまき:頑張ろう。




たまき:あ、もしかして♪
 紅蘭:空洞やな。出れた出れた。
たまき:よ〜し、あとは出口に通じる道を探すだけだね。
    今来た道に目印を付けたら、出口を探そう。
           ・
           ・
 紅蘭:・・・何本あった?
たまき:()の三叉路から来た道を除くと、 この空洞から8本の道が出ているよ。
    出口、すぐに見つかると思ったのに・・・。
    こうなったら一本一本調べないと。
 紅蘭:うち、思ったんやけど、この空洞が最初に入った空洞()とちゃうんやないか?
    あそこにある地底湖も、空洞(
)にはなかった気がするし・・・。
    引き返し点(
)の向こうに別の空洞があったのかもしれん。
たまき:ええ?
 紅蘭:また新しい空洞に出てたとしたら?
    この8本、どれも出口に通じてないかも。
たまき:そんなぁ。だめだよ、そんな考え方。
    紅蘭、疲れちゃったんだよ。いっぱい歩いたもんね。
    可哀相に。
 紅蘭:・・・ああ、ごめん。どうかしてるな、うち。
たまき:この8本の道全部が外に通じてる可能性だってあるよ。
    諦めちゃだめ。
 紅蘭:うん。
たまき:(とはいえ、運悪く8本全部をチェックするとなると・・・、
     1本30分として
・・・4時間? クラクラしちゃう。)
    紅蘭、私ちょっと見てくるから、ここで待ってて。
    15分間進んでみて外に出れなかったら戻ってくるから。
    1本につき往復30分ね。
 紅蘭:そんな、あんた一人なんて、あかんて・・・。
たまき:大丈夫だよ。
    出口があってもなくても、一本チェックするごとに
    ここに戻ってきて呼ぶから、絶対に返事してね。
 紅蘭:たまきぃ・・・。

たまき:気にしないで。
    私に任せておいて。
 紅蘭:ごめんな。うち、もう歩かれへん。
    ・・・うちの懐中電灯も持っていって。
    電池は大丈夫でも、電球切れたらどないもならんようになる。
たまき:ありがとう。暗いけど我慢しててね。
 紅蘭:あと渡せるものは・・・
たまき:ん?(くんくん)・・・お薬のにおい?
    紅蘭、もしかして怪我してたの?
    なんで言わないのよ!
 紅蘭:あ?気ぃ付いた?

たまき:大丈夫?転んだの?痛い?
 紅蘭:いや、怪我とちゃうねん。
    さっき蚊に刺されたみたいでな、カユミ止めの軟膏を塗っててん。
    掻くと痕がのこるやろ?
たまき:カユミ止めかぁ。なんだ〜、びっくりした。
    怪我してないんだね。ほんとに。
 紅蘭:うん。大丈夫。
たまき:よかったぁ。・・・くすっ。
 紅蘭:なんや?
たまき:こんな生きるか死ぬかってときに、
    掻いたら痕がのこるなんてこと気にするなんて可愛いじゃん、と思ってさ。
    じゃあ、出口を探しに行ってくるよ。
    そこから動いちゃだめだよ。
 紅蘭:うん。気ぃつけてな。

    (約1時間後)

  (2本目の洞窟探索中)


たまき:・・・・・・蚊に、刺されたぁ?

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

いまいる空洞に入る途中で蚊に刺されたと紅蘭に聞いた私は、
すぐ、そこに戻ってみました。
足元ばかり見ていて、初めに通ったときには気付きませんでしたが、
上を見ると、洞窟の天井が抜けていて、外が見えていました。(笑)
ここは林の中のようで、頭上には木が生い茂り、木の葉のあいだから星が見えます。
もう、すっかり夜になってたんですね。
崩れた岩を登れば、そこから簡単に外に出られそうです。
私は、急いで紅蘭を迎えに戻りました。





無事に出られたので、紅蘭はただでは済みませんでした。(笑)
では、おやすみなさい♪

   
 



前の日記を見る



次の日記を見る



日記を閉じる