歴代ゴジラ映画の中の「ゴジラ対メガロ」

第1作から第4作の「モスラ対ゴジラ」までは、ゴジラは明確に人類の敵だったわけですが、
第5作「地球最大の決戦」以降、行きがかり上ながら人類に味方するような行動を見せ始めました。
その後テレビ全盛の時代を迎え、ゴジラの人気もゴジラ映画の収益も低迷していきます。
そこで「ゴジラ対へドラ」から予算規模と作品のスケールを縮小し、対象年齢も大きく下げて、
”東宝チャンピオンまつり”の1本として再出発したのでした。

「子供向け」で「人類の味方」のゴジラは子供たちのアイドルとなりました。
「ゴジラ対へドラ」以降、「ゴジラ対ガイガン」「ゴジラ対メガロ」「ゴジラ対メカゴジラ」「メカゴジラの逆襲」が
東宝チャンピオンまつり用として製作されましたが、そのなかでも「子供向け」傾向がもっとも強かったのが、
この「ゴジラ対メガロ」です。




時代背景:「ゴジラ対メガロ」を取り巻いていた環境
「ゴジラ対メガロ」が作られた1973年は、どのような時代だったのでしょう。

1973年は、戦後から続いていた高度経済成長がついに終焉を迎えた、日本経済にとってとても大きな節目の年でした。
この年の10月、第4次中東戦争が勃発し、それを契機に産油国は原油価格を高騰させたのです。第1次オイルショックです。
これを境に日本経済は大きく後退していったのでした。
しかし、「ゴジラ対メガロ」が公開された3月の時点では、輸入品である石油への依存度の高さに対して
警鐘は鳴らされてはいたものの、景気は依然上向きで、それは今後も続くであろうと予測されていました。
右肩上がりに毎年成長し続ける経済は、豊かさとともに、続くインフレ、公害や土地不足などの社会問題も生み出しましたが、
それでもこの1973年の春という時期は今から見ると、日本人が最後に経験した天下泰平の時代だったといえるかもしれません。


当時放映されていたアニメ・特撮などの子供番組はどうだったでしょう。
調べてみてその密度の濃さに驚きました。

関東地区で、1973年に放映中・または同年放映されたアニメ・特撮番組
および「ゴジラ対メガロ」公開時期に再放送されていたアニメ・特撮番組

1972年から放映中だった
アニメ番組
1973年に放映開始されたア
ニメ番組
1973年3月の再放送アニメ番組
マジンガーZ
おんぶおばけ
ど根性ガエル
科学忍者隊ガッチャマン
デビルマン
アストロガンガー
ハゼドン
かいけつタマゴン


バビル2世
ミクロイドS
ミラクル少女リミットちゃん
新造人間キャシャーン
ドラえもん(日テレ版)
ジャングル黒べえ
山ねずみロッキーチャック
カバトット
けろっこデメタン
ワンサくん
荒野の少年イサム
空手バカ一代
エースをねらえ!
侍ジャイアンツ
キューティーハニー
冒険コロボックル
☆ウメ星デンカ
ムーミン
花のピュンピュン丸
男どアホウ!甲子園
サイボーグ009
もーれつア太郎
魔法のマコちゃん
みなしごハッチ
天才バカボン
海底少年マリン
黄金バット

1972年から放映中だった
特撮番組
1973年に放映開始された
特撮番組
1973年3月の再放送特撮番組
ウルトラマンA
仮面ライダー
人造人間キカイダ−
サンダ−マスク
愛の戦士レインボーマン
アイアンキング
行け!ゴッドマン
ウルトタマンタロウ
仮面ライダーV3
キカイダー01
流星人間ゾーン
ファイヤーマン
魔人ハンターミツルギ
ジャンボーグA
ロボット刑事
レッドバロン
イナズマン
光の戦士ダイヤモンドアイ
風雲ライオン丸
鉄人タイガーセブン
行け!グリーンマン
チビラくん
キャプテンウルトラ
ウルトラマン
ウルトラセブン
トリプルファイター
突撃!ヒューマン
そのほか放送開始された子供番組
ひらけ!ポンキッキ
ケーキ屋ケンちゃん

これらは放送時期がずれているため、全ていっぺんに放送されていたわけではありません。
しかしそれでも、その量には驚かされます。特に特撮番組の豪華さは特筆に価するでしょう。
後々まで名を残す特撮ヒーローが、百花繚乱かつ群雄割拠な状態です。
多感な子供時代にこのような容赦ない特撮ラッシュをかけられたおかげで、一生そこから抜け出せなくなって
今にいたるという人は多いのではないでしょうか。

ちなみに、当時のテレビ局は”他局の子供番組の放映時間にあえて自局の子供番組をぶつける”、
という方法で視聴率の取り合いをしていたので、見たい番組が重なってしまうと片方は見ることができませんでした。
これら番組がどのように重なっていたのか、参考までに「ゴジラ対メガロ」が公開された1973年3月の、
アニメ・特撮番組の重なり具合を表にしてみました。

日テレ TBS フジ NETテレビ(テレ朝)
日曜よる7時 アイアンキング(TBS) マジンガーZ(フジ)
月曜よる7時 ワイルド7(実写) 魔神ハンターミツルギ バビル2世
火曜よる7時 サンダーマスク けろっこデメタン
金曜よる7時 ウルトラマンA ジャングル黒べえ
土曜よる7時 おんぶおばけ ど根性ガエル 怪傑ライオン丸
平日よる6時 天才バカボン(再) ウルトラセブン(再) みなしごハッチ(再) 魔法のマコちゃん(再)

これは悩みますね。
金曜日は「ウルトラマンA」を見るか、「ジャングル黒べえ」を見るか…
当時は当然「ウルトラマンA」を選択していたでしょうが、後の不遇な扱いを知っていると「ジャングル黒べえ」もはずせないです。
ビデオデッキがあれば問題ないんですけど、この当時はやっと”ラジカセ”が発売され始めたという科学レベルの時期ですから、
ビデオなど夢のまた夢というか、存在すら知られていたかどうか、ともかく録画という行為はできない時期なのでありました。




テレビ特撮全盛の時代と「ゴジラ対メガロ」

テレビではこのように毎日何本も、正義のヒーローが悪い怪獣や宇宙人をやっつけるといった、
勧善懲悪の世界が放送されており、子供たちもまたそれらに夢中になっていました。
これが当時のトレンドだったわけです。

”東宝チャンピオン祭り”という子供向け映画4本立て企画の1本として公開された「ゴジラ対メガロ」も、
怪獣の姿をした正義の味方ゴジラと、人型巨大ヒーロージェットジャガーが侵略者の操る悪い怪獣達と戦うという、
このトレンド路線をしっかりと踏襲した特撮ヒーロー映画、として作られたのでした。
これは、テレビに観客を取られて斜陽産業になった映画が、逆にそのテレビの影響を強く受けざるをえなかった時代の流れであり、
この時期のゴジラが「子供向け」で「人類の味方になってしまった」のはむしろ当然でしょう。

また、”東宝チャンピオン祭り”のライバル企画、”東映まんがまつり”の存在も忘れてはなりません。
この2つの企画はわざわざ同じ日(1973年3月17日)に封切られています。
”他局の子供番組の放映時間にあえて自局の子供番組をぶつける”のと同じ現象が、映画館でもおこっているのです。
1973年春の東映まんがまつりは「パンダの大冒険」「飛び出す人造人間キカイダー」「仮面ライダーV3」
「ひみつのアッコちゃん」「マジンガーZ」「バビル2世」という、鼻血の出そうなラインナップでした。
東宝サイドとしてはこれに対抗するためにも、子供に人気のある「人類の味方ゴジラ」を前面に出だして行かざるをえません。

こういう状況でしたので、「ゴジラ対メカゴジラ」のDVDのオーディオコメンタリーで中野昭慶特技監督がいうように、
「ゴジラを原点に戻そうという意見は毎回あったが、
 一旦子供たちのアイドルになったゴジラを再びそっち(原点)に戻すことは難しい話だった」
というのは、当時の子供たちのためにも、興行的にも、もっともな判断だと思われます。
よく、ゴジラが「子供向け」で「人類の味方になってしまった」こと自体が批判されますが、
こうして当時の「ゴジラ」を取り巻く状況を考えてみると、それはむしろ妥当な設定変更だったといえるのではないでしょうか。
それを好きか嫌いか、支持するかしないかは、もちろん人によって違ってくるのでしょうけれど。

ちなみにこの年の”東宝チャンピオンまつり”のラインナップは「ゴジラ対メガロ」「パンダコパンダ雨ふりサーカスの巻」
「ジャングル黒べえ」「飛び出せ青春」という、今思えば激しくマニアックなものでしたが、
当時の子供への受けぐあいはどうだったんでしょうね。
どちらにどれくらいお客が入ったのか、とかは調べられませんでしたが、
え〜…、私はこの年、東映まんがまつりのほうに行った覚えがあります。(笑)
ふと疑問に思ったのですが、歴代のチャンピオンまつりには、新マンやウルトラマンタロウは参加しているのに、
この時期放映されていたウルトラマンAが、いちどもラインナップに含まなかったのはなぜなんでしょうね。不思議です。



「ゴジラ対メガロ」のあらすじと解説(2005年6月17日追加更新)
解説のために映画の画像をいくつか引用しているので、
デジラマと一緒にならないようページを分けました。
かなり長い解説文で、しかもオチなんかありません。
「ゴジラ対メガロ」という作品が好きとか、特に興味のあるという方だけどうぞ。<いるのか?
「ゴジラ対メガロ」のあらすじと解説ページへ




とまあ、長々と書いてきましたが、「ゴジラ対メガロ」の説明もだいたい終わったことだし、
ではそろそろ本題に入りましょうか〜〜。(なんだって?
今回はこの「ゴジラ対メガロ」の新怪獣メガロとジェットジャガーをフィーチャーした、
タカラの着ぐるミクロマンシリーズで、amazonでも絶賛大安売り中の「メガロVSジェットジャガー」です。


メガロ

あの、いきなりですけど、メガロは黒・茶色系なんですが
なんで緑色で成型されてるんだろう…。
着ぐるミクロマンシリーズに関しての様々な問題点は、
すでに他のサイトで書き尽くされていると思うので、
ここでは書きませんが(いまさら、ですし)、
色が全然違うってのはどうなんでしょうね。
何を見て色指定したんだろ〜。

造形は、まあまあなんじゃないでしょうか。
頭や手のドリルが小さすぎるとか、
全体のプロポーションがアレンジされちゃってるんですけど、
まとまりはいい感じ。むしろかっこよくなってるかも。
ボディーの質感もそれっぽいですね。

ただ、プロポーションいじられついでに、
メガロにはなかった立派な”肩のでっぱり”まで新たに造形されてます。
こんなのがあるせいで肩関節が動かせないんですけど…
なにがやりたいんだタカラ。





メガロ 奥多摩湖に出現

ダムの下のほうでは伊吹博士と六郎君が大変なことになってるシーン。
ここの特撮は、オープンで組まれたリアルな小河内ダムのセットが圧巻です。



キングギドラそっくりの光線で、過去にギドラが破壊した街をそっくりそのまま破壊するメガロ、のシーン。

この映画はライブフィルムの多用が大きな特徴のひとつですが、
話によると低予算な上に制作期間が3週間しかなかったそうなので、新規に撮るのは不可能だったのです。
予算がなくても時間があれば、まだ工夫のしようがあったかもしれませんが、
両方ないのではもう、できることは、ライブフィルム使用という”工夫”しかなかったのではないでしょうか。


61式戦車部隊とメーサー殺獣光線車

「サンダ対ガイラ」のライブフィルムに出てきます。
そのL作戦における陸自の攻撃とメガロのリアクション映像が、
かなり丁寧に繋ぎ合わされて、あまり違和感がありません。

もっとも、あとのシーンになると、いろいろな映画のシーンを使うせいで、
夜になったり昼になったりかなり忙しいことになってますけど。


ジェットジャガー

普通にソフビ人形として出して欲しいんですけど〜。
可動しそうでできないのがもどかしいのが、この着ぐるミクロマンの
ジェットジャガーです。
ヒジが曲がらないので、いっそ切り離して
腕パーツを2ピースにしようかと思ってます。

造形自体もアレですが、ちょっと頭が大きいですね。
あと、ボディーの色はもっと明るく派手なのが正しいと思いますし、
ツヤはないほうがよかったと思います。


ジェットジャガーの元の名はレッドアローン。
レッドアローンは公募してつけられた名前で、
当時西武系であった西友の子供向けイベントに出ていたりもしたそうです。
西武鉄道の特急にレッドアロー号というのがありますが、
あれはこのレッドアローンからとったんだとか。(詳細不明)

そのレッドアローンが映画に出るさいに、
頭その他デザインを変更して、ジェットジャガーとなったのでした。
ちなみに顔デザインやカラーリングは中野特技監督によるもので、
「テレビにライバルのかっこいいヒーローがたくさんいたので、それに対抗せず、
逆に正義の味方に見えないように、けばけばしくいやらしいデザインに、かっこ悪く作った」んだそうです。
そのとおりに見えますので確かに狙い通りの出来栄えなんですが、
そもそも最初から、そのデザインの方向性は間違っているような…


ジェットジャガーの構え

この構えのために、ミクロマンの腕を抜いて、針金を仕込んでヒジを曲げてます。
あと、腕のパーツ内側を削ったりしてます。
ミクロマンの関節だけだと、まったく曲がりませんので。


着ぐるミクロマンだけだと寂しいので、バンダイのソフビ怪獣から、ゴジラとガイガンを出しましょう。
ゴジラはいちおう1974年の「対メカゴジラ」版ということなんですが、
これには前年の「対メガロ」とおなじぬいぐるみが使われていたので、
「対メガロ」版としてもいちおう問題ありません。
ガイガンは、年代はもちろん問題ないですが、造形が古いので非常におもちゃっぽいです。
色もこんなに明るい色じゃないような。
   

ところで、私は一般に人気の高いモスゴジやキンゴジよりも、このゴジラが好きです。
キャラ立ちしたかわいげな顔も好きだし、メガロ戦で見せる”猫パンチ”もポイント高いです。
逆に一番ダメだと思うのは、これの前のゴジラ(「怪獣総進撃」〜「対ガイガン」に使われていたやつ)です。
顔が大きく首が細長くて、なんかバランスが悪いんですよね。

実際の大きさの比較。





ゴジラ上陸

ジェットジャガーに呼ばれて、はるばる怪獣島からやってきたゴジラです。ボランティアも大変ですね。
最初のゴジラからの中の人、中島春雄さんは前作「ゴジラ対ガイガン」で引退されたので、
「対メガロ」では新たに高木真二さんという方がゴジラに入っていました。
殺陣の指導もあるでしょうから、それが高木アクションというわけではないかもしれませんが、
今作のゴジラのアクションは、前の「対ガイガン」や後の「対メカゴジラ」に比べても、
子供向けなコミカルなものになっています。
高木さんがゴジラに入ったのはこの1作だけでした。



メガロ&ガイガンチーム相手にひとりで戦うという不利な状況で一方的にボコられていたジェットさんですが、
ここにやっとゴジラが到着。形勢逆転と行きたいところですが、その前に「握手」。
映像では、握手する気のなかったゴジラに対して、ジェットさんが「よくきてくれた」というかんじで、
両手でゴジラの手をつかむ握手をする、というものでしたが、
そんな可動範囲はこの着ぐるミクロマンにはないので、再現するのは無理でした。


ガイガンのポーズ。アクションの形(かた)なのかな。
よくこんなポーズをよくやってました。

ガイガンの中の人は中山剣吾さん。のちに薩摩剣八郎と名を改めて、平成ゴジラに入られる方です。
ガイガンの手のツメは、今なら樹脂製で空洞にして作るんでしょうけど、
当時のこれは木を削って作ったとても重いもので、自由自在に動かすためには相当の腕力が必要だったとか。

今回の記事を書くにあたって、4回くらい見直しました。
結構好きな作品だったけど、…さすがに、いいかげんいやになってきたぞ?(笑)

作品に色気がないのは大きな弱点ですね。ほぼ女性が出てこないんですよ、この映画。
シートピア王国のダンサーが女性だったというくらいで、あとは出てくるのは男ばっかりです。
「対ガイガン」は菱見百合子さんが出てきて、何の説明もなく空手の達人だったりして、
色々楽しめたのに。
でも「対メガロ」は、敵はおっさん2人、かたや味方は仲良し青年2人とショタですからね。
そういう雰囲気が好きな方はけっこう楽しめるかもしれませんけど。(笑)


2005年6月5日 20:58:51